第2話 1回目で足りなかった物は「コミュ力だ!」
俺。
いや、わたし?
違うな、幼稚園生女子は自分を私って言わない。はずだ。
うーん。自分の名前で良いか。
瑞穂は幼稚園の入園式に参加していた。
自己紹介のために、ひとりひとり自己紹介をする。
勿論就活の面接みたいな自己紹介ではない。幼稚園生同士のはじめましての挨拶だ。
他の子の自己紹介を見ている限りだと、男の子は基本「おれ」か「ぼく」だった。
そして女の子は自分の名前が第一人称だ。
つまり俺・・・じゃなかった。瑞穂も自分のことを瑞穂って呼ぶことにする。
「ななせ ななみ です!おねがいします!」
今自己紹介したのは後の国民的アイドルになる七瀬 菜々美だ。
たしかこの頃から既に子役として芸能事務所入していたらしい。
「たかなし けんと です!」
こっちは確か友達だった高梨 健人だ。
小学校に入った後、別のクラスになって、それから疎遠になった。
中学の時になった時に同じクラスになったけど向こうは覚えて居なかった。
まぁ学校の人気者になってたし、更に可愛い彼女も出来てたしな。
他は特に気になった子供は居なかったけど、一応全員の名前覚えた。
前回の人生で瑞穂に足りなかった物は「コミュ力」だ。圧倒的に足りてなかった。
なので今回はソコを鍛える!そのために全員と仲良くなる!
☆
入園から1ヶ月。
瑞穂の所属する[さくらぐみ]は完全に瑞穂に統率されていた。
菜々美には女子を任せ、健人には男子を任せる。
そして瑞穂は男女ケンカ無く遊べるルール作りと、二人に手に負えなかった時のフォローに専念した。
☆
「おい、おまえ!ねんしょうのくせになまいきだぞ!!」
急に大声で話しかけて来たから、思わず身体がビクッってなった。
子供って声デカイよね。加減が出来てないのかもしれない。
振り返ると年長の男の子が腕組みをして立っていた。
「生意気?」
よくわからん事を言うので思わず聞き返してしまった。
どういう意味で言ったんだコイツは。
いや、そういえばコイツは幼稚園生だったな。言葉の意味なんてろくに理解していないのだろう。
「そうだぞ!ガキはとしうえのいうことをきかないとおこられるんだぞ!」
どうやら先生の権力を傘に着て偉ぶっている小物のようだ。
とはいえ、相手はまだ5~6歳の子供なので、まだ矯正出来る年だろう。
「本当に?じゃあ先生に聞いてみるね!」
瑞穂がそう言うと年長男子が解りやすく動揺しだした。
「や、やめろよ!!」
少年涙目。おぉ可愛い。そんな可愛い顔されちゃうと少し苛めたくなっちゃうね。
「うふふ、やっぱり嘘だったね!瑞穂の言うこと聞いてくれたら嘘吐いたこと内緒にしてあげるよ?」
「わ、わかった!いうこときく!!」
「じゃあ今からずっと、瑞穂の奴隷ね!」
「? わかった!」(わかってない)
この少年の名前は遠山 利行(とうやま としゆき)と言うらしい。2個上の年長さんだ。
彼が卒園するまでに、なんとか性格を矯正してみよう。
実質園内のボスである利行くんが矯正されたら他のやんちゃなガキ共も大人しくなるだろう。多分だけどね。
☆
それから瑞穂が卒園するまで特筆すべき事件やイベントは無かった。
あえて言うなら、利行くんが卒園する時に「瑞穂ちゃんと離れたくない!!」と号泣された事くらいだろうか。あれは大変だった。瑞穂にしがみついて離してくれなかったのだ。
結局、利行くんが泣きつかれて寝るまで添い寝した。
利行くんが寝た後、利行ママが急いで抱き上げて帰っていった。
起きたらまた暴れるからね。後日お詫びにお菓子の詰め合わせが届いたので桃組の皆で食べた。
幼稚園の3年間で瑞穂はかなりコミュ力を身に着けたと思う。
なんせ相手は幼稚園児。会話と言うよりはフィーリングで意思疎通をするのだ。
そしてこちらもそれに合わせた返答をしなければならなかった。
幼児に論理的な会話なんてしても理解出来ないからね。
この調子で小学校もコミュ力アップを意識して行きます!!
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