TSして子供からやり直す三十路DTおじさん

れぷ

1章 幼稚園~小学生

第1話 DTおじさん幼女になる

 30歳童貞。

 正確には29歳と364日と23時間50分。

 あと10分で無事30歳童貞になる。なってしまう。


 逆神 瑞穂(さかがみ みずほ)。俺の名前だ。

 女みたいな名前だがれっきとした男だ。

 今では冴えないおっさんだが幼少期は女の子と見間違えるほど可愛らしかった。

 幼稚園の頃のアルバム見るか?

 のちに国民的アイドルになった女の子と同級生だったんだが、幼稚園の頃の俺はその子を軽く凌駕するほど可愛かったんだ。

 まぁ、第二次性徴期でガッツリ男らしく育っちゃって見る影も無いんだけどな。


 俺は今、20代最期の夜を神社で過ごしている。

 何故かと言うと、あまりにも冴えない人生だったから神頼みに来たんだ。

 30歳に成ると同時に賽銭をして神頼みをする。

 ぶっちゃけ神様とか居ると思ってないが万が一居る可能性も捨てきれなかった。


 30歳になった!


 取り敢えず「記憶を持ったまま人生やり直させろー!」とか言って、パチンコで勝った30万を賽銭箱に投げ入れた。



 俺の人生は本当にぱっとしない物だった。


 と言っても中学生以降の事だが、やたら体格が良くなった俺はそのガタイを活かせる部活をしようと柔道部に入った。

 まぁキッカケは柔道漫画にハマったのが原因なんだけどな。

 最初の1ヶ月は普通に部活をやっていたが、それ以降は顧問の先生が用事で柔道場を離れると先輩達からのシゴキが始まった。

 次々と辞めていく同級生に続いて俺も辞めた。

 それから中学時代は何の部活にも入らなかった。

 中学の3年間でのエピソードがこれしか無かったくらいイベントも事件も無い3年間だった。


 次は高校だ、高校は所謂底辺と呼ばれる学生の半分以上が不良という最悪な所だった。

 よく調べもせず一番近い高校を選んだ過去の俺を殴りたい。

 一応不良じゃない生徒も結構いたので、そいつらの肩身の狭い思いをしながら過ごした。

 まぁ不良高校だったからイベントや事件は沢山あったらしい。が。

 俺はモブだったので一切関わることが無かった。良かった。


 大学は流石に良く選んで決めた。

 取り敢えず不良とは縁のない所が良い。そう思い必死に勉強し、地方では有名な所に言った。

 だがそれも失敗だった。

 今で言う陽キャってやつらだらけでノリについて行けなかった。

 一応何度か飲み会に誘われて行ったが、クソつまらない素人弄りが鬱陶しかったので飲み会には行かなくなった。


 就職活動時も上手く行かなかった。

 学生時代に形成された俺の人格は[根暗]になっていた。

 そんな俺は面接で落とされまくって、結局アルバイトをして暮らすことにした。

 それから30歳までダラダラと無駄に年を重ねたのが今の俺だ。

 最初に言ったとおり童貞だしな。


 神頼みをした後、俺は神社の入り口から続く階段の最上段に腰掛けた。

 チューハイを飲みながら今までの人生を振り返る。


「碌なもんじゃないな」 つい口に出す


 それからちびちびとチューハイを飲んでいると段々眠くなってきた。実は酒弱いんだよな・・・


 まぶたが重くなり、やがて心地よい気持ちになって来た。

 マズイこのままだと神社で寝てしまう。

 そう思いつつ、俺は気持ちの良い睡魔の誘惑に勝てなかった。


 ☆


「みずほちゃーん!朝よ~おきなさ~い!」


 懐かしい声がした。

 なんだか声にハリがあるが、この声は母さんの声だ。

 しばらく実家に帰って無かったな。と思いつつ起きる。


 ん?此処は・・・?


 キョロキョロと辺りを見回すと見覚えの無い部屋だった。


 いや、見覚えはあるな。

 此処は確か父さんがマイホームを買う前に住んでいたアパートだ。

 最近、昔のアルバムを見返したから覚えている。


 そして俺の手、小さい子供の手だ。

 足も短いし、この服も完全に子供服だ。

 アンパ○マンのプリントされたトレーナー、これアルバムでみたな。


 これはもしや神頼みが叶った?!

 マジかよ!最高じゃないか!!

 これで人生やり直せる!


 俺は頭の中で今後の人生の選択をしていた。

「今度は失敗しない!」とつぶやいて。


「あら?みずほちゃん起きてたの?起きてたらちゃんとお返事しなきゃダメよ?」


 返事をし忘れていたから母さんが部屋まで起こしに来た。おぉ!母さんすげぇ若い!!

 確か俺を20歳で産んでて、このアパートに居た時期と俺のこの手の小ささ具合からいくと、多分23歳くらいか?わっか!俺30歳でDTだぞ?信じられねぇ!


「みずほちゃん。お返事は?」


「あ、は~い!」

 くっそ可愛い声が俺の口から出た。

 やべぇな幼少期の俺、声まで可愛いぞ。


 母さんは朝ごはんが出来たから呼びに来たようだ。

 母さんと手をつなぎ、食卓があるダイニングへ向かった。

 途中母さんの化粧台の鏡に写った俺を見た。

 昔のアルバム通り、女の子にしか見えない可愛さだった。

 まぁ中学には消滅する可愛さ何だけどな。勿体ねぇ。



 朝食を食べた後、母さんが目線を合わせて話出した。


「みずほちゃん。今日からみずほちゃんは幼稚園に通うのよ。幼稚園っていうのは、みずほちゃんと同じくらいのお友達がいっぱいいる所なの。わかる?」


「うんっ!」


「わー!みずほちゃん偉いわ~!じゃあ!幼稚園の制服にお着替えしましょうね!」


 母さんは近くにあった紙袋から、まだ透明なビニールに包まれた新しい制服を取り出して俺に着せ始めた。

 あれ?この歳って一人で着替え出来るんだっけ?「自分で着られる」って言って良いのかわからん!


「うふふ。もう少ししたら自分でお着替え出来るように練習しましょうね!」


「うんっ!」


 ふぅーーーーー言わなくて正解だったか。中々スリルがあるぜ。


 着替え終わってクローゼットの扉の裏に付いている姿見で確認する。


 制服は基本色が白でセーラーの襟や袖口などに紺色が使われている。

 セーラー服風スモッグって感じだ。

 そしてスカート・・・・・・ん?スカート?!

 スカートの裾を摘んで持ち上げる。そして顕になるおパンツ様。

 まぁ色気なんか皆無の幼児パンツなんだけどな。

 そして確認するためにおパンツ様の上から自分の股間をさわさわしてみる。


「お母さん!ちんちん無くなった!!」


「落ち着いてみずほちゃん。みずほちゃんにおちんちんは生まれたときから付いて無いのよ!」




 元30歳DTおじさん。女の子として人生やり直すみたいです。


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