【恋愛】「傷」「夏」「言葉」

 あの夏の日。


 突然の夕立に打たれる中、互いの傷を舐め合った。

 彼氏に振られた私と、彼女に裏切られたあなた。

 同じような境遇で、同じような悲しみと憤りを抱えていた。

 魔が差したのか、自棄になったのか、ただ寂しかったのか。

 いずれにしろ、感情の捌け口とも、心の拠り所ともつかない場所を求め、相手の瞳の奥にそれを見つけた。

 濡れた身体を温めたくて。離された手を握ってほしくて。


「唇、冷たい……」


 凍えそうに弱々しい言葉を抱き締めたくて。

 私達は、互いの痛みに寄り添いながら、雨混じりのキスをした。

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