【偏愛】「至近距離」「諦め」「贖罪」
「罪人であるお前を刑に処す」
彼は宣言した。
憎しみのこもった眼差しを、対峙する相手に余すことなく浴びせながら。
図らずも至近距離で見つめ合うことになり、諦めにも似た笑いが漏れた。
場違いな表情を目の当たりにして、彼の声にますます怨嗟の色が混じる。
「そうやって、お前は何度も彼女を侮辱したんだろう」
侮辱した覚えはない。が、貶めたのは確かだ。
自分の優位性を見せつけるために。彼女に絶望を味わわせるために。
彼の寵愛を受けるのは自分一人であることを、はっきりと理解させるために。
「でももうそれも終わりだ。ここでお前に裁きを下す」
それでいい。
贖罪などしない。赦しも乞わない。
愛に狂った愚かな女には、焦がれた男からの最後通告さえ甘美な告白に聞こえるのだから。
どんな思念が込められていようと、今その瞳を向けられているのは他でもないこの自分だ。
それ以上の幸福があるだろうか。
彼が生きている最後の瞬間まで傍にいることはできなかったけれど、自分が死ぬ最期の瞬間までその心を独占できた。
そしておそらく、死んでからも彼の記憶の中には残り続ける。
他の誰にも成し得ない、自分だけの愛の刻み方。
たとえ肉体と魂が滅んだとしても、彼に刻んだ後は、決して消えはしない。
そう。
きっと、永遠に、彼の持つ負の感情は私だけのものだ。
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