054「ストームテル 竜巻の詩人の物語」/キューイさん ※本文引用あり※
https://kakuyomu.jp/works/16816700427296049329
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こちらの自主企画を覗いて見つけました。
【読み専さん歓迎の本棚!】若いやつらぁ!!集まれぇい!!
https://kakuyomu.jp/user_events/16816927862320348995
お察しかと思いますが私は若くありません。
遥か昔、ツイッターアカウントを持っていたころ、戯れに「ツイート内容から年齢を診断する」というものをやってみたら、「あなたの年齢は93歳です!」と結果が出たほどです。当時私は何をつぶやいていたのだろうか……。(ついったらー最年長だったのでは!?)
ではなぜあの自主企画を覗いてみたかというと、どーれどれ最近の孫・ひ孫、なんなら玄孫世代はどんなものを書いておるのかねえ……と、まあ、つまり興味本位です。
その中でこの作品からは、完結済み、シンプルなタイトルとタグ、あらすじ、吟遊詩人モチーフ、という、それはそれは私好みの雰囲気を感じ取りました。
「若いやつらぁ!!」に参加されているくらいなので、作者さんは学生さんなのかな? と勝手に思っています。違っていたらごめんなさい。
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楽器が弾けなくて詩を歌う吟遊詩人が言葉の力で成り上がる、という設定の時点で、なんだかおもしろそうに感じませんか。
つまりどういうこと? 音楽じゃなくて言葉でぶん殴るの!? 自分で言っといてアレだけど言葉でぶん殴るってどういうこと!?
しかし主人公トルバトルくんは非戦闘員です。「言葉で巻き込む」、竜巻の詩人です。かっこいいよね、竜巻の詩人っていう二つ名。
とはいえやっぱり「言葉で巻き込む」ってどういうこと!? となりますが、トルバトルくんは、周囲を、状況を、本当に詩を歌うことで巻き込んでいきます。
【以下本文引用(「第5話 うごかすうた」より)】
俺は頭を下げた。同時に歯を食いしばった。今の俺は俺の求める詩人像とは程遠い。本来ならばそこでこんな質問も来ず、俺が頭を下げることもなく、人々がやる気を出してくれるのが理想だ。しかし俺の力不足なようで頭を下げることになってしまった。
【本文引用終わり】
こういうところがいいよねえトルバトルくん! 驕ることもなく、卑屈になることもなく、自分の実力をきちんと把握している、骨のある若者ですよ。
また、チャンスを逃さず自分の糧にする運と、胆の強さも持っています。
お師匠様はもちろんのこと、ネスト様がトルバトルくんのいいところをちゃんと見抜いて抜擢する眼力が素晴らしいです。あんな領主様の治める土地に住んだら、きっと退屈しなさそうですよね。
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このシーン、引用させてください。
【以下本文引用(「第37話 朝練のうた」より)】
(略)こりゃもう物を褒めるしかない。俺は練習に戻った二人を尻目に近くにあったネスト様の別荘を囲む柵を見つめた。
「……城壁のようだな。或いは主君を守る騎士と言ってもいい。君のような立派な柵は見たことがない。この邂逅には名をつける価値がある……」
「と、トルバトル?平気か?」
俺が柵を口説いているように見えたのだろう。起きて来たネスト様にガチで心配されてしまった。(略)
【本文引用終わり】
思わず声に出して笑ってしまいました。そりゃ心配するわ。
◆
後半はまさかの展開で驚きました。さらなる成長の機会を経て、仲間たちと再会できたのはよかったけど、なかなかのしんどい状況です。
たぶんきっと、家令さんをはじめ他の使用人さんたちも戻ってくるんじゃないかと思います。というか、そう思いたい。
みんなの力を合わせて、またかつての街の姿を取り戻せたらいいなあと、願わずにはいられません。
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以下、余談。
実は読む前は、必要最低限のタイトルあらすじからシリアスな物語を想像しました。中身は一人称の、いわゆるラノベでした。
正直、誤字脱字も多少見受けられ、文章も荒削りな印象です。しかし物語自体は展開が早く、なんだかとても勢いがあって、ついつい読み進めてしまいました。これが若さなのかしら。
ラノベ調ではありますが、結構しっかりいい文章も書かれているので、作者さんはその気になれば、一般文芸寄りのシリアスな物語も上手に書けるのではないでしょうか。
これは93歳のおばあちゃんのひとりごとですが、作者さんには、今後いろいろな(ザ・ウェブ小説! みたいな作品とか、もちろんラノベもだし、歴代本屋大賞作品とかも)ジャンルの本を読んで、いろいろ書いて、半年から一年ほど期間を置いたのちに、もう一度この作品を読み直してみてほしいです。
たぶん、見えなかったものが見えてくると思います。
おばあちゃんはすごく期待したいです。
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