053「龍鱗のピモ」/かがち史さん ※本文引用ネタバレあり※

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891676616



【以下ネタバレ】


 ピモは主人公の名前ではなく職業でした。


【ネタバレ終わり】



 詳しくないし分析もしていないのでざっくりな印象ですが、構成がいわゆる「ヒットするストーリーの法則」になっているのではないのかな? と思います。


 理由はともかくのっぴきならない状況の主人公から始まり、超重要人物との出会い、のっぴきならない理由の判明、別れと成長と新たな出会いと、悲しみと、さらなる成長と絶望と葛藤からの、伏線大回収!! そして、希望を含む終わり方。


 おもしろくないわけないじゃーん!!

 めっちゃくちゃ好みです。


 恋愛、友愛、家族愛、親子愛、師弟愛。

 愛情の物語でした。


【以下本文引用(「第4話 魂の鳥」より】


「我々、ピモの間では、死者の魂は、三つに分かれると伝えられている。一つ目の魂は天へと昇り、二つ目の魂は村を守り、そして三つ目の魂は〝あるべき場所〟へ帰るのだと」


【本文引用終わり】


 この設定が、ストーリーを通して大変に切なく効いていました。

 クライマックスとラストでの魂の登場もそうでしたが、第19話の魂は二つ目だったのかな。あの演出は泣けます。愛が深い。


 歌や呪文詠唱にいかにも異国な雰囲気があって、世界観が際立っていました。見た目の良さに加えて、歌の上手さがモテに通じるのか〜……。いろいろある意味厳しい世界だわ。


 状況が状況で環境が環境だから仕方ないんですが、主人公が大人になるのが早いよ……!

 村の親切なおばちゃんBとかの、主人公を見かけるたびに「持っていきな!」って野菜とか肉とか渡す役に、私はなりたい。本編にそんな人出てきてないけど(描写がないだけで、でもたぶん近い人はいると思う)。

 追加短編で、主人公が小藍に声をかけちゃうのも、気持ちはわかるけど君がそれを言うのはまだ早くない!? と思ったら小藍がちゃんとわきまえていてよかった。彼には彼の生活があって、それを嘆いていないのは安心です。小藍は将来的に、多少変わり者かもしれないけど、胆の据わったいい男になりそうな気がします。


 地の文とセリフで名前表記に区別のある書き方が、個人的には好きだなあと思います。こういう細かいところに気の配られている小説は、いいですよねえ。

 〝言葉が通じるか否か〟問題も、そりゃあ住んでいる(いた)場所によりますよね。そんなの超越してる場合もありますが。

 あっさりした退場でしたが、チェダはなかなかにオイシイポジションでした。幸せになっておくれ。



 以下、余談。

 昔々の、宮崎駿氏の著作「シュナの旅」をご存知の方はいらっしゃいますでしょうか。

 学生時代、「さくたはこういうの好きでしょ、あげる」と、なぜか突然友人からもらったことが、その本との出会いでした。

 友人の予測どおり好みドンピシャ、それはまあ大ハマりしまして、幾度の引っ越しを重ねてもずっと共に移動してきているくらい、大好きな作品です。

 今作「龍鱗のピモ」からは、「シュナの旅」と同じ匂いを感じました。

 ええ、つまり、大好きです。大好きなんです。こういう、淡々と壮大で、出会いと別れと、葛藤と成長と、切なさと希望を孕んだ物語が。

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