050「処刑の魔女は笑う」/聖願心理さん④ ※本文引用あり※

https://kakuyomu.jp/works/16816452220910060973


 その魔女の名前は、ツェツィーリエ・シュネルドルファー。本人ですらたまにつっかえるほどの長くて言いにくい名前を、さらりと口にする聖騎士ギルバート・ハールトーク。

 このネーミングセンス、いかにも聖願さんだなあと思います。どこから出てくるんだろうか、この響き。

 頭が固くて生真面目なギルバートが、噛まないようにツェツィーリエのフルネームをぶつぶつ練習している姿を想像すると、ちょっと微笑ましいです。


 魔女を連行しなければならない聖騎士と、まだ死にたくない魔女。立場上、馴れ合ってはならないふたりですが、何度も顔を合わせるうちに少しずつ心を許し始めてしまいます。

 個人的には、このあたりのじれじれをもう少し詳しく読みたかったかなあと思いました。

 愚直な男子が年上の女性に翻弄されていく様子とか……逆にちょっとからかってやろうと思っていた年上女性が、だんだん男の子の実直さに絆されていく様子とか……ふふふ。



 いつまでも魔女を連行しないギルバートに痺れを切らして、ついにお仲間の聖騎士団がツェツィーリエの元にやってきます。

 案の定、名前を噛む。噛みっ噛み。そりゃね、普通、聖騎士は練習なんかしないもんね、魔女の名前なんて。


 そして、ギルバートの渾身のひとこと。


【以下本文引用(「魔女は笑う。」より)】


「頼む、ツェツィーリエ」


【本文引用終わり】


 っかああーー! ここで名前をしっかり発音するかあああーーーー!!


【以下本文引用(同)】


「貴様もか?」

「あら、ツェツィーリエって呼んでくれないの?」

「……ツェツィーリエもか?」


 相も変わらず、ギルバートは私の名前を噛まない。そんなことがとても嬉しかった。


【本文引用終わり】


 ここは悶えましたね!! こういうの好きすぎる!


【以下本文引用(同)】


「笑っている魔女は本物。しかも、相当な寂しがりやのね」


【本文引用終わり】


 このセリフが、物語を象徴しています。

 笑っている=本物の魔女=寂しがりや、です。この短いセリフに込められた感情の落差がめっちゃめちゃエモいです。



 ラストに向けての怒涛の展開は、タグにもあるようにメリーバッドエンドですので、大変に好みでした。大人な魔女の物語はこういうビターな後味であってほしいです。



 感想の結論。

 好みが詰まっていて大満足な物語でした。ありがとうございました。

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