049~050
049「花の簪」「花の琴 ー花の簪外伝ー」/たびーさん ※本文引用あり※
「花の簪」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882061997
物語のあらすじ記載はありませんが、不思議なことに作品の雰囲気は、シンプルなタイトルとキャッチ、タグから十分感じ取ることができます。そして他サイトで賞を受賞されたとのこと、つまりしっかり読み応えのある物語なのだろうなあと予測できました(トップページに受賞歴が記載されていることは、私にとって、読む読まないの判断材料のひとつになります)。
そのとおりでした。一気読みでした。
◆
歌の師弟物語。読む前はてっきり、お嫁に来た異国のお姫さまがその国の王宮楽師に歌を教わって、みたいな物語かと思っていたら、なんとまるっきり逆でした。
歌の稽古を通じて少しずつ気持ちが通い合う姫と楽師。稽古の山場の場面は胸に迫ります。
表情のまるで感じられなかった姫が徐々にかわいく思えてくる様子や、片言の姫の、言葉足らずだからこそ伝わってくる必死さがとてもよかった。楽師である自分だけが姫の魅力に気づいているっていう優越感も、ちょっぴりの背徳感もやっぱり切ない。
本来なら姫と気持ちを通わせなきゃいけないはずの、王様の立場を思うと複雑で、私はどうにも王様を憎みきれませんでした。しかしもっとうまい方法があったと思うんだけど、諌めてくれるような宰相や大臣はいなかったのかな……つらい。
個人的には、特に姫の侍女さんが好きです。「これはきっと小鳥の声」なんて、粋なことを言う!
この方の気位の高さがもう惚れます。
◆
「第17話 手だて 4」での、伏線の散りばめられ方です。
【以下本文引用】
しょせんは子どもだ。孫姫さまからは、これといった手がかりは得られなかった。
【本文引用終わり】
なんとニクイ一文か。
そしてそれも後々(ネタバレのため自重)……まあそうなるよね……!
ゾランさんもいいですね。
【以下本文引用(第15話 手だて 2 より)】
「(略)おれは安くない」
わたしはぐうの音も出なかった。
「安いものだろう? 命の値段が、それっぼっちだなんて」
ゾランは皮肉な笑みを浮かべた。その表情に、幾度も自分の命を金に換えてきた者の生きざまを垣間見たように感じた。
【本文引用終わり】
ここのやり取りが好きです。自分の価値をわかっている強い傭兵さんかっこいい。ここからラストのラストに至るまで、ゾランさんは実にいい仕事をなさる。
力のない楽師は何もできず、ただただ巻き込まれて、一部始終を目撃します。そう、語り手は傍観者で、本当の主人公はお姫さまなのです。
脇役タイプが主人公の切ない物語! 私の好みに直撃しているのです。おわかりいただけますでしょうか!! 超好き!!!
◆
昔語りで始まってラストで今に戻る手法(勝手にアマデウス方式と呼んでいます)で、ぐっと惹き込まれます。
すべては終わった話。真実は切ない余韻を残して、一度きりの歌に溶けて消える。
明言せず、含みをもたせて終わるラストも好きです。たまりません。
異国情緒あふれる描写で、読んでいる間はノンストップで映画を観ている感覚でした。私の脳内では、かぐや姫モチーフの、例のジ○リアニメのような絵柄や雰囲気で再生されていました。
出会えてよかった。もっと早く読めばよかった。
ありがとうございました。
(2021413)
◆
以下、追記。
「花の琴 ー花の簪外伝ー」
https://kakuyomu.jp/works/16816700429246395199
本編の作品フォローだけしていたので、外伝の公開に気づくのがとても遅くなりました。なんという読者サービス! ありがとうございます!
大好きなんですよこの、サーデグが終始淡々としていて、しかも主人公なのに脇役っていうのが、ほんともう……!!
最初から最後まで、相変わらずゾランさんがとてもいい仕事をなさる。
ちょっと私が苦手な雰囲気に、今度こそ持っていかれちゃうかと思ったら、サーデグがうまーいこと躱してくれたので安心しました。よかった、さすが。
まあ、そういう雰囲気になったとしても、たぶんそれが好きな人にはいわゆる「尊い」というやつなのかもしれないな、とは思います。
辛うじて「エモい」を理解したレベルの私に、果たして「尊い」を理解できる日が来るんでしょうか(どうでもいい)。
攻撃するだけが武器ではないのです。
胸の内の想いや、大切な思い出を乗せられた歌は、直接人の心に突き刺さる。ときにそれは血を流すより痛かったり、どんな薬よりも傷を癒したりする。
サーデグは想いと思い出と技術を受け取って、受け渡して。そこに繋がっていくのかと思うと本当に切ない。大好きです。
素敵な物語をありがとうございました。
(20220402)
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