048「電気と魔法 −電気工事士の異世界サバイバル−」/林海さん ※追記あり※
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896877754
以前に自主企画「主人公が大人なファンタジー物置き場」で見かけ、タイトルとあらすじ、タグから地雷も少なそうだしちょっと気になるけど連載中かあ……うーん、とフォローだけしていて完結を待っていました。
「主人公が大人なファンタジー物置き場」
https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054934325818
チェックが甘く、随分前に完結されていたことに気づいたのは、カクヨムコン読者選考期間終了数日前。
改めて確認したら、全280話、88万文字オーバー!
よっ、読めるかこれ!? 期間中に読み終わるのか!? 最悪、番外編は後回しで、本編だけでも読めれば……!
と、思ったら。
番外編含めた全話、読めましたね。自分でもびっくり。めちゃくちゃ読みやすく、とてもおもしろかったです。未読話数がもりもり減っていくのが快感であり、寂しくもありました。
読みやすさって本当に大事。おもしろいのは大前提。
◆
異世界転移ものです。
魔法の存在する、ある事情でジリ貧な世界へ召喚されたのは、ちょっとコミュ障気味で「お貧弱」な、至って普通の二十代男性、鳴滝さん。
職業:電気工事士。
チートはありませんし、ハーレムのハの字も見えなかった。しかも代理……だと!?
しかし持っている電気の知識と一般教養+α、一部の物資と、何より無欲さとお人柄で、とことん無双していくんです。爽快でした。
私はド文系で、数学や理科、ましてや電気に関する知識もさっぱりです。専門用語や仕組みの解説部分は理解半分な感じでしたが(それでも絶対十二分にわかりやすく書いてあるんだと思う……ああ無知って不便!)、そのほかの部分も本当におもしろいので、ぐんぐん読めました。
これ、電気がわかってたらもっと楽しめたのかなあ。わかる方、読んでみてどんな感想を持つか教えてほしいです。
何より、世界設定の創り込み方。
個人的に感心していたのは、各話のコメント欄で読者さんからの「こうでは?」「ああでは?」という提示・推測に対し、作者さんはそれらの知識ももちろんほぼ踏まえたうえで、設定とストーリーを構築しているところです。知識に関してコメントできる読者さんもすごいけど、それを上回る作者さんの知識量・人生体験が半端ない。
またそれらの設定が伏線になっていて、無駄なくきちんと回収される手腕もお見事。どれだけ細かく設定してあるんだろう。
なおかつ、読みやすいっていう。最高ですね。
頭のいい人が書くわかりやすい文章は、最強です。
ちょいちょい出てくる現代日本ネタのジャンルもなかなか幅広い。ニヤリとできる人はさらにお得に楽しめて、いいなあと思います。私は半分くらいしかニヤリとできなかったです。
◆
ルーですよ! とにかくルーです。ヒロインのルーがかわいい。
健気で頭の回転が速くて気が利いて、強い。で、怖がり><←かわいい。
でもそうならざるを得なかった事情が、たまらなく切ないのです。壮絶な努力の人だわ……推せる。頼んだよ鳴滝さん。
あと王様です。このお方が素晴らしい。歴史に残る名君でしょう。ケロ□声の見た目がプ△デターらしいですけどね。キャラ立ちしすぎ。
今まで「街のちょっと変わった人」だった職人さんたちが、適材適所に仕事を与えられてみるみる才能を発揮、人も街もどんどん活気づいていくさまは、読んでいてこちらも嬉しくなりました。
ギルドの役割の、表事情と裏事情もまた現実的でよかった。ここまで創り込まれた設定は、他で見たことがないです。
ケナンさんパーティーも超優秀、バランスよくて好きですわ。初登場時からのギャップで好感度上昇しっぱなし。
そのほか、みんな本当にいいキャラばっかりでねえ、つくづくいい国になりましたよダーカス。
個人的に筆頭魔術師さんが名乗るに至った、あの場面が好きです。泣きそうになりました。ヴューユさんかっこいい。
結局最後まで最年少の魔術師さんの名前が出てこなかったのが、超気になってます。それを言うなら鳴滝さんのフルネームもだけど(本郷さんはもしかしてそのまま?)。
水汲み水車(ノーリア)の完成エピソードでさらに感動した後の、架橋祭。なんでアレをやっちゃうかな鳴滝さん! 感動する場面のはずなのに声出して笑っちゃったよ!!
忘れた頃に蒸し返されるし! もう!!
これ絶対、力を入れる大事な場面で思い出しちゃって、私一人でぶふふって笑っちゃうやつじゃん!! どうしてくれるんですか!
◆
鳴滝さんの無双はダーカス国に留まりません。周辺国を巻き込んで、大陸丸ごとの物語へ発展します。
異国情緒たっぷりに、一緒に旅をしている気分も(危険も)味わえました。ウキウキしてる王様にちょっと親近感。
トプさんの活躍がすごかった!! ヒヤヒヤしたわー。
そして判明する第一話からの、伏線回収。
鳥肌でした。
◆
何がすごいって、鳴滝さんがこの世界に召喚されてから、関わった人で一人の死者も出ていないこと。戦争も含めた88万文字もある異世界ファンタジーで、です。
この偉業が、まさに本当の
◆
文庫本にして8~9冊ですかね。全然長く感じず、あっという間に読んでしまいます。
理系も文系も、男子も女子も、みんな読んだらいいよ。自分たちが受けている日本教育の水準がいかに高いか、しみじみと実感できる。
何度も読み返したくなる物語でした。本当におもしろかったです。
◆
【2021年4月・5月追記】
他サイトですが、HJ小説大賞2020後期にて一次審査(4月)、さらに二次審査(5月)を突破されたそうです!
おめでとうございます!!
ここでも言いたいので言います。ほらねー!? おもしろいって言ったじゃーん!! ねー? やっぱりそうでしょそうでしょ!
うれしいな〜。わーいわーい!
さらなる結果もお祈りしております。
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