044「世界で一番あなたがきらい」/湊波さん ※個人的意見あり※

https://kakuyomu.jp/works/1177354054887171135


 読了後、「なるほど、これが『エモい』か……」とつぶやかずにはいられないほど、この小説にはエモさが詰まっています。エモかった。エモいという他になかった。


 今まで私は、何がどうなれば「エモい」のかをイマイチ理解していなかったのですが、この「世界で一番あなたがきらい」を読んで得た個人的結論は、


「エモい」=「高低差」


です。

 人間関係において、感情、性格、性別、環境、立場、距離、過去、エトセトラ……に差があって、登場人物たちがそれを乗り越えようとすることを総括して「エモい」と言い表せるのだと、思います。

 便宜上「高低差」と表現しましたが、どちらが高い/低いというわけではありません。とにかくその差があればあるほど、ストーリー展開がアツくなります。


 ちなみに、この個人的結論を確認するために、同じく湊波さんの書かれている、エモについて熱く語っているエッセイ「カクヨム枕草子」も覗いてみました。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054892953897


 おそらくそんなに的外れな結論ではないと思いますが、どうでしょうかね……?



 さて、この「世界で一番あなたがきらい」は、エモの大洪水です。すっごかった。怒涛の伏線回収をしながら、破綻せずエモさ満載ストーリーをまとめる構成力に脱帽です。


 まずタグの「男装ヒロイン」。ここですでに性別の矛盾という高低差が生じていますね。

 次にあらすじ。「水の国」と「火の国」。水と火、ここで高低差。「実力者で人気者の第一王太子」と「ひねくれ者で孤高の第二王太子」で、「火の国」内でさらに高低差があります。

 

【以下あらすじ引用】


孤高の王太子 × 秘密を抱えた男装女騎士の恋物語風ハイファンタジー。


【あらすじ引用終わり】


 つまりそういうことですよ! エモだらけ。おもしろくならないわけがない。

 本編で出てくる高低差(主人公コンビならず脇役キャラたちもまたエモい)について詳しく語るとネタバレになるので、とにかくアツかったです、とだけお伝えしておきます。(いずれどこかで詳しく語りたい……)

 特に後半にかけては、感情の高低差に振り回されっぱなしでした。ハッピーエンドだとわかっていながらも、待って、ちょっとそれって、それってええええ!? などと、もうドキドキを通り越して心臓が痛かったです。



 各キャラについて言いたいことを言います。


 とにかくフェン愛されですね。アンジェラさん!! まさかの!! これは意表を突かれました。

 アッシュ王子の偽名について、読み終わってから気づくという察しの悪さでした。あれはちょっとしたアハ体験でした。

 ゲイリーさんはいいキャラでしたねえ! 人間味があって、読者的に一番親近感が湧きます。が、私はオルフェさんが好きです。あの翳があって飄々と喰えない感じが、ええ、そりゃもう。ツボですよ。使用人さんも好きです。

 第一王太子ユリアスのヤバさはとんでもなかったです。あの方おそらく作中で一番ヤバイ。火の神より怖いですよ。よくやったなアッシュ……!


【以下個人的意見(※読み飛ばしてください)】


 蛇足ですが、個人的には、ラストのセリフは、もう一回タイトル回収でもよかったかなあと思います。

 作中の通りも王道的な感動エンドで、とてもとてもいいのですが、クライマックスとエンディングでの「世界で一番あなたがきらい」に込められた意味の高低差でさらにエモさがマックス!! という展開もまた、きっとアツかったと思いました。


【個人的意見終わり】



 「99の質問」のご回答にて、ご紹介ありがとうございました。有意義な読書体験をさせていただきました。

 超高低差両片思いの、過去と国を巻き込んだ超絶じれじれ、王道恋愛ファンタジー。大変、大変おもしろかったです。

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