042「八千代さんは味にうるさい」「ちょっと身体と喧嘩しまして」/千鳥すいほさん ※本文引用あり※追記あり※
今回も「99の質問」のご回答にて、夏野けいさんよりご紹介の作者さんの作品です。私のマニアックな好みを見事に見抜いておられました。ありがとうございました。
夏野けいさんの質問回答ページ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896488492
直接のおすすめは「八千代さんは味にうるさい」のみでしたが、あまりにも好みで思わずもう一作品読みました。
どちらも、作品全体から醸し出される、ちょっとシュールな感じがとても好きです。
◆
「八千代さんは味にうるさい」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893083374
まず、キャッチコピーが秀逸です。
「八千代さん、あのさ、今日のデザート、人間でもいい?」
えっ、えっ?? つまりどういうこと⁉
いろいろな作品に目を通してきたつもりですが、ここまでインパクトの強いキャッチコピーはそうそうないです。これはちょっと真似したくてもできないレベル。
それからタグの並び「ホラーではない(重要)/相互不理解」のシュールさです。この時点でわくわくが止まりません。個人的に。
ここまでで、八千代さんに関しては、
・味にうるさい(タイトル)
・デザートに人間を食べることも吝かではない(キャッチコピー)
・異方の神という謎の人外(あらすじ)
であることが判明しています。
しかし第一話のエピソードタイトルで、「人間を食べない」と、いきなり矛盾しています。
本文を読む前までの感想で、すでに私は300文字以上も使っていますね。なんなんですかね。超好みです。
第一話の出だしのインパクトもすごいんです。本文引用は控えます。未読の方は実際に読んできてください。
第一話冒頭で必要な人物(人外含む)の登場と必要な伏線がしっかり張られています。短編は瞬発力も重要ですから、この書き方はお見事だなと思いました。
しかし「
八千代さんはわけがわからないままですが、不器用な宇佐美くんの、諦観と葛藤と、淡い期待が、ちょっと切ないです。
似たもの同士ながら、輪をかけて不器用で生きるのが下手だった先輩に、いつかその話を聞いてもらえる日がくればいいなあ、とひっそりと思っています。
オチ、好きです。さすが八千代さん、味にうるさいだけあるよね……(笑)
◆
「ちょっと身体と喧嘩しまして」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887776814
タイトル! なんなのこのタイトル⁉(笑)
恋愛で、ラブコメでした。って、これネタバレになりますか? いや、カテゴリとタグだから大丈夫なはず。カクヨムでは、恋愛で、ラブコメで、正しいです。
出だしの一文のインパクトと、冒頭からの畳みかけるような急展開がもうたまりませんでした。
生首くん、「顎の輪郭に沿って途切れている」っていうのが、さらっとニクイ伏線です。
【以下本文引用】
フローリングの上をころころと三回転、こちらを向いた状態で生首が止まる。悪夢的な光景を前に、何も言葉が出てこない。
数秒の沈黙の後、生首は爽やかに微笑んだ。
「お邪魔します!」
「律儀か」
【本文引用終わり】
ここ好きです。
現実だか幻だか正常だか異常だかわからない光景なのに、変に常識的な生首と、一周回って思わず普通のツッコミをする主人公のシュールさに笑ってしまいました。
第二話で判明するナオちゃんの秘密と、第三話で急浮上するカオルの素性。
身体と喧嘩しちゃうタイプの人って、世の中に、実は結構いるのかもしれません。うまく折り合いをつけたり、どうしても許せなかったり。生きづらい世の中が生きやすく変わるには、まだまだ、時間がかかることでしょう。
重たいテーマを孕んでいますが、終始コメディ調で、でも切なくて、二人のやりとりに泣き笑いしてしまう感じです。
強いな、二人とも。幸せになってほしいなと思います。
衝撃のラストもすごかった。この落とし方は予想できませんでした。最高でした。
◆
二作とも、本当におもしろかったです。
夏野さん、読書のきっかけをありがとうございました。
◆
【2021年3月追記】
「ちょっと身体と喧嘩しまして」祝・アンソロジー収録です!! おめでとうございます!!
ほらねー!? おもしろいって言ったじゃーん!! 嬉しいなー!
テーマ的にも、今のご時世にぴったりなのではないでしょうか。おもしろいだけでなく、読後はちょっと深く考えさせられる内容です。中高生にもぜひ読んでほしいなあと思います!
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