033「デウスエクスマキナの孤独」/詩一@シーチさん④ ※本文引用あり※

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886059184


 かなりマニアックな私の好みにドストライクで突き刺さりました。



 リンク先の小説は読みましたか?

 まだの方は、ぜひ読んでください。

 そうでない方はどうかブラウザバックをお願いします。ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。


 小説本文を読んだ方、そしてマニアックな語りが許せる方のみ、よろしければ続きをどうぞ。



【以下本文引用】


 そんな宇宙の中の一つの銀河系の中の一つの惑星の中の一つの国の中の一つのアパートの一室。


【本文引用終わり】


 ずいずいずいーっ! と焦点を絞った先にいるのは、ただの一人の男。

 でも、「宇宙の広がりを1メートルだけ戻す」という男の持つ超能力で、一気に焦点がまた宇宙の外へ向かっていく。ショートショートの中でスケール感が狂います。めまいがしました。

 でもこの能力、天文系理系から見たら、実はものっすごいことなのでは⁉ 純度百パーセントの文系の私には、全然ピンと来ませんが。


 男は強大で壮大と思う自分の能力を、他人はちっぽけだと言う。

 こういう細かいスケールの比較が、随所に散りばめられています。


【以下本文引用】


 男は他者に、社会に、世界に、宇宙に認められたかった。証明したかった。自分が有用な人間で唯一無二の価値を持つ絶対的な存在であることを。


 しかし解らせようとその超能力を振りかざせば振りかざすほど、彼は他者に、社会に、世界に、宇宙に、疎うとまれ嘲あざけられ嫌われ傷つけられてきた。


 見返したかった。


 ただそれだけだったが、ただそれだけが異様に難しいことであった。


【本文引用終わり】


 宇宙にすら認められたい自己顕示欲の塊‼ を、敢えてシンプルな一文でグッとまとめる手法が好きです。



 『ワイバーン山田やまだ』の名が出てきた時点で、イヤな予感がめちゃくちゃ期待をしたんです。


【以下本文引用】


「俺はバックトゥーザ田中たなか。いや、名などどうでもいい。(省略)」


【本文引用終わり】


 バック、トゥー、ザ、田中‼


 腹筋、死にました。

 この能力者名は自分で考えるんでしょうか。


 ちなみにバックトゥーザ田中さんのループ物語で、一本映画が撮れます。彼の長いセリフの中で、気になる超能力者が目白押しです。


・「超能力者を発見する超能力を持つ超能力者」(言葉遊びか! この能力を持っていたところで役に立つのか、と思いましたが田中さんの役に立ってよかったね)

・「銃を複製する能力を持つ超能力者」(ピンポイント過ぎる)

・「対象物を三日間かけて三メートルワープさせる能力を持つ超能力者」(効率わっる!)


 バックトゥーザ田中さんが37回ループしてくれたおかげで宇宙は守られました。危ないところでした。バックトゥーザ田中さんが「卑劣で頭のイカレタ野郎」にならずに済んで本当によかったです。



 バックトゥーザ田中さんと最悪の出会いをして、名無しの男は充足の瞬間を迎えることができたのでした。

 めでたしめでたし。



 というところで物語が一旦解決したように見えて、さらに続きます。

 隠滅の藤倉ふじくらさんだけは「隠滅の藤倉」なんですよね。あ、この人はカタカナの能力者名がないんだな、普通だな、と思った瞬間に目に入る「メモリーズ池田いけださん」のダサさ(言っちゃった……)に、もう一回腹筋が死にました。


 そして無となった部屋からの、締めの一文です。


【以下本文引用】


 その一室は、一つの国の、一つの惑星の、一つの銀河系の、一つの宇宙の中に確かに存在していた。


【本文引用終わり】


 ここで物語の出だしと逆に、ずいずいずいーっ! と焦点を無限に広げていくのです。


 表現で韻を踏む、と言うのでしょうか。こういう、こだわって狙ったのがわかる文章構成の妙が、私は大好きです。



 詩一@シーチさんの小説の感想を書くのは、これで四作目です。本当に本当に幅広い作風をお持ちです。

 ここまで私の好みに突き刺さる小説を書く方は、プロも含めてそうそう出会えません。


 つまりファンです。


 応援しております。

 

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