032「勇者の復讐」/暗藤 来河さん ※本文引用あり※個人的願望あり※

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893575013


 当たりを引きました!(ガッツポーズ)


 この小説は、自主企画「【完結済】第1話のPV(閲覧数)400以上」(主催者:まるてさん)に参加されている中から見つけました。なので、本来の“スコップ”とはちょっと意味合いが違うかもしれません。


(自主企画へのリンク)


https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054894771331


 タイトル、キャッチコピー、あらすじのシンプルさ!

 昨今の説明文タイトルは目が滑ってどうにも読書欲を削がれる私は、この潔さに一際目を引かれました。


 試しに第一話を覗いたら、文章が読みやすいことも相まって、もう一気読みでした。



 転生勇者が現れたことによって割を食う、影に回らざるを得なかった人がいます。

 剣術と魔法を極め、命を削って、魔族から国を、世界を守るために奮闘していた、現地の本当の英雄です。

 転生勇者が現れる前は、その英雄こそが勇者の立場を肩代わりしていたのですが、伝承通りの「本物」がいきなり現れたら――

 彼の心情を想像すると、本当にやりきれないです。

 「本物」と言ったって、どこの誰とも知れない弱っちい青年です。そいつが今まで自分がいた立場に納まって、いきなり持て囃される理不尽さ、とても納得いきません。

 立場と共に自信と誇りを奪われて、自棄になって自堕落な飲んだくれ生活を送っていたところに、なんと魔族側からのスカウトが来ます。


 そしてダークサイドへ堕ちていく元勇者の主人公、ユーマ。


 そこから彼の、人間側に対する復讐が始まります。


 有象無象の集まりであるはずの魔族側が、ある意味人間側よりもずっと結束力が高く、種族を超えてお互いを仲間と認め合い、「魔王のために」戦うのです。

 この「魔王」が! 「魔王」であることの秘密が、熱い‼ 細かく語るとネタバレになってしまうので我慢しますが、


【以下本文引用(「過去」より)】


 魔王が全ての魔族を統べる刻、異なる世界から一人の人間が現れる。其の者は魔を滅する剣を抜き、魔王と相見え、世界に平和が訪れる。


【本文引用終わり】


 この伝承の一文に集約される、壮大な伏線とその回収劇に、胸が打ち震えました。



 魔族側のキャラと、それぞれの抱えるバックボーンも苦しくて切なくて、大変好みです。オールスター総出演、個性も様々な種族が出てきます。

 私はアニーちゃん推し。人間側のあの作戦はエグかった……!

 あとケルベロスかわいいです。ケルベロスの登場理由も物語の伏線、というニクさがたまりません。


 人間側、特に転生勇者本人の苦悩が描かれている点も大変よかった。

 望んで来たわけでもなく、剣もろくに使えないのに、いきなり魔王を斃してくれなんて随分勝手な願望を押し付けられて、こっちこそ理不尽な立場です。

 へっぽこ勇者かと思っていましたが、自覚を持ち始めて急激に成長していく様は、さすが選ばれし勇者様でしたね。



【以下、個人的(※作者様、読み飛ばしてください)】


 一点だけ、申し上げます。

 全編一人称視点で物語が進んでいきます。が、くるくると変わる人物の視点に、比喩でなく文字通り目が回りそうになりました。

 一人称視点は、その視点キャラの心情を描くのにとても有効な書き方であることは存じております。しかし変更が目まぐるしくて、「今は誰視点?」と混乱することもしばしば……。(私の読解力の問題と言われればそれまでです)

 もしタグに「一人称視点切り替え」が入っていたら、避けて読まなかったかもしれません。最後まで読めたのは、ひとえにストーリーのおもしろさがあったからです。

 できれば、視点を固定、もしくは三人称で、読みたかったです。


【個人的願望終わり】



 最終話のエピソードタイトルに込められた意味、その余韻を噛みしめています。

 この上なくシンプルなタイトルとキャッチコピー、あらすじからの、予想を裏切る熱い展開、本当におもしろかったです。

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