011「ひとりぼっちのソユーズ Fly Me to the Moon」「象と蝶」/七瀬夏扉@ななせなつひさん ※追記あり※【書籍版】ネタバレあり※

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880552117


 書籍化、おめでとうございました。


 だから、なんでTruck1とTruck2を上下巻で同時刊行しなかったの‼


 って、ずっと言ってるのは私だけです。

 カクヨムで出会った小説で、ベストスリーに入る好きな作品です。

 私はソーネチカが好きです。



 SFにカテゴリされていますが、つまりは「スプートニク」と「ソユーズ」の、壮大なラブストーリーです。

 お互いを求む気持ちは、宇宙すら超えて。


 終始切なくて。

 ずるいんですよ、最初から最後まで明かされない謎。最後の最後で明かされるでしょうと思ったら、明かされないまま終わってしまった最大の謎。


 ――主人公の名前。


 ユーリアに「スプートニク」って名づけられて、「スプートニク」で終わるっていうね。もうニクい。ずるい。そういうの大好きです。

 自然に呼ばせないようにしている書き方がうまい。


 Truck2は、中高生の課題図書にしたらいいんです。

 自然環境問題、差別問題、生まれ育った場所と、自分の個性、そして不可能と言われていた夢を実現させる壮絶な努力!

 みんな、ソーネチカから勇気をもらいなさい。

 私はもらいました。ありがとう。


 それと、ちょいちょい猫がかわいいです。 



https://kakuyomu.jp/works/1177354054880380456


「象と蝶」


 打って変わって純文学。読めたのはたぶん七瀬さんだから、だと思います。

 空気感が懐かしいです。二十歳前後の、何かしたくて、何もしたくなくて、世界の中心にいるつもりで、やっぱりひとりぼっちの、強がりと寂しさが同居してるあの倦怠感と言いますか。

 すっきりしない、もどかしさ。嫌いじゃないです。


 読める純文学は読みますが、私にしては珍しいチョイス。

 作家読みでした。


(20200217)







【20221010 書籍版感想追記】

主婦の友社「ひとりぼっちのソユーズ」上下巻 ※ネタバレあり※


 一年以上越しですが、完全版書籍化、本当に本当におめでとうございました!!!


 そんなに好きなら早く読めよって感じですよね。申し訳ない。

 よっしゃ買った! これでいつでも読める! いつ読もうかな、ちゃんと精神的にしっかり読めるときに読みたいな! って大事に取っておいたら、一年経ってしまいました。

 実際の書籍を見た方はおわかりかと思いますが、上下巻それぞれ、なかなかの重量があります。カバンに忍ばせて隙間時間に読み進めるにはちょっと厳しい。あとストーリーほぼ知ってるから泣くことも予測できるし、誰かのいるところで読みたくない。

 いざ読み始めてみれば、加筆の量がとんでもないことに気づいて、こりゃやばいと思いました。どんな読者サービスだよと。ご褒美か。

 読了後の今になって、富士見ファンタジア文庫版も購入しておけばよかったかなと思っています。しかし私が求めていた「ひとりぼっちのソユーズ」はそこじゃなかったので、当時はちょっと憤りすら感じていたんですよ……おめでたかったのに……実に自分勝手なファンで申し訳ないです。



 第一部。青春遠距離恋愛パートですね。

 ウェブ版に比べて、主人公の移動距離が増えまくってますよね? あんなに飛行機に乗っていなかったように記憶しています。(七瀬さん、種子島は取材に行かれました?)

 ヘルメットをかぶってカブに乗って登校するユーリアの姿は見たい(笑)。ユーリアに合わせてあらかじめ免許を取っていく主人公も、素直でかわいい。

 第一部のソユーズとスプートニクは、くっついて離れてくっついて離れてくっついて離れてくっついて、離れて。

 ロシアの教会で思わず出ちゃった主人公のプロポーズに対して、ノータイムで「いやよ」って言ったユーリアは、さすがユーリアだなって思いました。秒で振られる主人公。笑っちゃった。


 「わーお」が口癖のアリョーシャ←ここテスト出ます! って感じ。



 第二部。社会派小説的(?)なパート。

 私はソーネチカが好きなんです。何度も言うけど。ユーリアとは違うタイプのツンデレ。強くて弱くて。凄絶な努力の人。

 名前が出ない主人公のことをソーネチカはずっと「あなた」って呼んでいて、さすがにちょっと主人公がかわいそうな気がしました。二人きりでいるとき、そしてソーネチカが主人公に甘えているとき限定の、ソーネチカからの何かしらの愛称があってもよかったんじゃないかなあとは、思いました。スプートニクとは違う特別な呼び方が。


 アリョーシャとの再会シーンはなんだかとても泣きそうになりました。主人公が最大に弱っていた時だったからかな。「宇宙に神がいることを証明するために」宇宙飛行士になったアレクセイの存在は、読者的にはすぐにピンときました。でも、様々な出会いと別れを繰り返してきた主人公はそうじゃなかったんだなあという部分がリアルで、もどかしい。



 第三部。めちゃんこSF。

 第三部読了後の主人公への感想は「忍耐力ありすぎる」です。粘り強すぎる。だからこその感動エンディングだと思いますが、たぶんユーリアはもっと回数少なく、あそこに辿り着いてる気がします(笑)。

 七瀬さん、ご自分の名前をラストエピソードタイトルに持ってくる気合の入れよう!

 第三部は第一部二部とは毛色がちょっと違うので、読者によっては好き嫌いありそうだなあと思っています。ガッツリSF。バタフライエフェクト。そしてもっとずっとしんどい。でも一番書きたかった部分ではないでしょうか?



 私が生きているうちに映像化されないかなあ。前後編もしくは三部作の長編アニメ映画でもいいし、一年くらいの長いクールでのテレビアニメ化もいい。

 そして各模型と猫のクドリャフカがアイコン化してグッズ展開するんですよね。クリアファイルとかアクリルキーホルダーとか、ぬいぐるみになるんですよねきっと。


 もっとたくさんSF作品や文芸作品を読んだり観たりしていれば、そこかしこに紛れているオマージュに「ふふっ」てなれたんだろうなあと思いながら読んでいました。私は読書や映画の好みが偏っているのであんまり「ふふっ」を体験できませんでしたが。あのね、わかる人がわかる。これがオマージュだよ(←最近何かを観た)。


 この上下巻二冊は、私の本棚の、一番目につく場所に保管します。素敵な読書体験を、いつでもまた味わえる幸せ。本当にありがとうございました。

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