009「スリーピング・マジェスティ」/斉藤希有介さん

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154908139


 眠れる国の美しい王様。

 弱体化した自国を立て直し、敵国から守るために必要なのは人脈、食糧、戦略、戦術、そして財政。

 おーさま、休む暇もないのに、眠ったら起きないし若返っちゃうなんて、家臣たちの心労たるや……お察し申し上げます……。

 しかし、もしかしてこれは、実はペギランの成長を愛でる物語なのでは⁉


 改めて読み直しました。壮大な物語の第一部のようですが、続きは公開されないんでしょうか。明かされていない部分も多いし、ラスボスの登場もまだまだなのに。

 中身がおじいちゃん美少年王の、「この愚かヤロウ!」っていう叱責セリフがどうにも好きです。少年王から叱られるのは大の大人、という絵面を想像するとおかしくて笑っちゃう。

 いくら美少年でも、中身はおじいちゃん。ギャップ萌え。


 いわゆる「ラノベ」の黎明期に、例えば角川スニーカー文庫とか、富士見ファンタジア文庫とかで、表紙に美少年王とヒロインたちのイラストがついて、捲れば挿絵もあって、本屋に平積みされててほしかった。

 もしくは、図書館の「ヤングアダルト」の棚に、単行本のざらざらしたエンボス加工の表紙で、それはよく見ると「華印フルール」のデザインが施されていて、光の加減でキラキラして見えたりして、中身は上下二段にぎっちり文章の詰まった段組みページで収まっていてほしい。

 装丁の色は薄紫でしょうか。ラヴェンダー色。



 少しマニアックなことを言います。

 読みやすい文章です。美しい比喩の使い方、誤字脱字もない確かな文章力、完成度の高い小説であることは間違いない。

 でも、読み始めると、独特の疲労感があるんです。身に覚えがある。なんだったかな……と記憶をたどると、思い至りました。

 「外国の翻訳された児童文学を読んだときと同じ疲労感」であると。

 おもしろいんだけど、最初は休み休み読み進めました。後半は文体に慣れ、一気読みできる。

 「はてしない物語」とか、「指輪物語」を読んだ時と同じ。この感覚、とても懐かしかったです。まさかカクヨムで味わえるとは……。


 と思っていたら、いつだか作者さんがツイッターで、「現地語の物語を日本語に翻訳した体で書いた(要約)」のようなことをおっしゃっていて、衝撃を受けました。


 まさに、そのものでした。

 感服いたしました。


 続編、待っていてもいいでしょうか。

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