9.橋姫『奥義抄』「さむしろに衣かたしき今宵もやわれを待つらむ宇治の橋姫」
今回は宇治の橋姫が出てくる話を、和歌の解説書「奥義抄」から読んでいきます。
宇治の橋姫は、嫉妬の鬼として知られ、藁人形を打ち込み相手を呪う「丑の刻参り」の発端とされます 。一方で、橋姫は古くから歌に詠まれ、特に嫉妬の意味合いを含まない恋愛の歌に出てきます。
元々、橋姫とは橋の守り神です。日本各地に様々な橋姫の伝承がある のですが、その中でも宇治橋は646年に作られたと伝えられる非常に歴史ある橋です。平安時代の仏教説話集「日本霊異記」では、あの世とこの世の境界として描かれている など神秘的な場所とされてきました。宇治の橋姫は、今も神社で祀られる宇治橋の守り神です 。
神と鬼、守護と呪い、愛と嫉妬という裏表な意味が付与された存在であり、それらが表裏一体であることを象徴すると言えるかもしれません。
嫉妬や縁切りの側面が強くなるのは、次回紹介する『平家物語』以降になりますが、今回はそれ以前に和歌の前提としてある程度共有されていたとされる 橋姫の物語を読んでいきます。この話での橋姫は嫉妬する側ではなく、むしろ嫉妬される側です。
なお、橋姫の伝承は様々なパターンがあります。今回は典型的な展開かつ簡潔に書かれた『奥義抄』の文章を読み、補足していきます。
また、本文で登場しない場面をある程度補えるのは、橋姫の物語を記した絵巻物が残っており、文章も添えられているからです。ただ、先に述べたように橋姫の物語の展開はいくつかあり、最後には夫が本妻の元に帰ってくるバージョンもあります 。
(現代語訳・古文に続く)
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