6.清少納言『枕草子』職の御曹司におはします頃

 前回に続き「枕草子」、今回は「職の御曹司(しきのみぞうし)におはします頃」より、中宮定子の人柄や清少納言との関係性を語る上で、よく引き合いに出される雪山バトルを読んでいきます。


 枕草子ですが、元々は世に広く見せるために書かれたものではないことが、跋文(ばつぶん=あとがき)とされる部分に記されています。逆に手がかりがこれくらいしかなく、あまりはっきりしたことはわかっていません。

 源経房という人が995~997年頃に家から持ち出して広め、その後も書き加えられて跋文は998~1001年頃書かれたとされています。

 紙が貴重な時代、紙を中宮定子から受け取ったとされ、元は日記、あるいは定子様にだけ見せるものだったのかもしれません。


 ちなみに、見せるものではなかったせいか、メモ書き程度に見える章(?)もいくつもあります。この十八段(能因本)は最たるものですね。(しかも、三巻本にはこの記述自体がない。)


十八段

 本文:たちはたまつくり。

 訳:太刀は玉造鍛冶がよい。 ※諸説あり 玉造鍛冶は東北にあった鍛冶集団。


 前回、清少納言が中宮定子を敬愛する様子を示しましたが、紙を渡した中宮定子も清少納言を信頼し、その能力を高く評価していました。

 今回の雪山バトルも、そんな様子が垣間見える一幕です。ひと月にわたる戦いがかなり詳細に綴られているので、発端と結末だけ読んでいきます。

 定子様は清少納言の10才くらい下であることを考慮しながらお読みください。


 なお、雪山話については、政治的背景との関わりで考察もなされているのですが、今回は素朴に読んでいきます。

 ※中宮定子の入内(じゅだい)という一族の命運に関わる記述を、慎重にさりげなく示すという役割を果たしているとされます(津島2013、赤間2015など)。ただ、こういった意味があったにせよ明示せず暗示するということは、清少納言としても、むしろエピソードをシンプルに楽しんでほしい(自身が楽しみたい)という思いもあった・・・かもしれないと思っています(わかりません)。



(「職の御曹司におはします頃」現代語訳・古文につづく)

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