第8章 鉄道での舞台追跡

2.0 移動系のアプリを入れてみた

第42話 航空系のウォーキング・アプリでごジャル

 四月末に、JALの飛行機を利用した時の事であった。


 機内で書き進めていた書き物をキリがよい所まで書き上げることができたので、隠井は、作業に一段落つけ、着陸までのわずかな暇時間、前座席の後背部に備え付けられていた機内情報誌を流し読みして過ごす事にした。

 その際に目に留まったのが、JALが提供している〈ウォーキング・アプリ〉の広告である。


 ウォーキング・アプリとは、スマートフォン搭載の万歩計機能や、GPSと連動し、歩いた歩数や移動した距離に応じて、歩数や移動距離をポイント換算する、そのようなゲーム感覚の健康アプリである。そうしたウォーキング・アプリの中には、貯めたポイントを、電子マネーのポイントやギフト券などに交換できる物もある。

 JALが提供しているウォーキング・アプリは、「健康とマイルが手に入る」がキャッチフレーズの、「JAL Wellness&Travel」という名称のアプリで、歩いた歩数に応じてマイルが付与される物であった。

 歩数それ自体の計測は、『iPhone』の場合は、スマートフォンに標準搭載されている『ヘルスケア』という名称のアプリの「万歩計」機能と連動して、歩数が計測される。


 JALウェルネスにおけるマイルの付与のあり方は、一日につき六千歩に達すると〈一マイル〉と抽選券が、八千歩に達すると、さらに〈一マイル〉と二枚目の抽選券が、そして、一万歩に達すると、さらに〈一マイル〉と三枚目の抽選券が与えられる、というものである。歩数は一万歩が上限なので、これ以上はどんなに歩いても、〈日〉という点においては、さらなるマイルも抽選券も手に入らない。

 上記のような、日毎のデイリー・チャレンジに加え、週ごとのウィークリー・チャレンジもあって、これに関しては、週に四万五千歩で三マイルと一枚の抽選券、六万歩に達すると、さらに五マイルと二枚目の抽選券が与えられる、という仕組みになっている。

 そしてさらに、マンスリー・チャレンジなる物もあって、一月につき二十万歩あるくと、十マイルが与えられる、とのことであった。

 すなわち、一ヶ月間、毎日一万歩というノルマをクリアすると、デイリー・チャレンジでは、三マイル掛ける三十で九十マイル、ウィクリー・チャレンジでは、八マイル掛ける四で三十二マイル、そして、マンスリー・チャレンジの達成で十マイル、月で計〈百三十二〉マイルと合計〈九十八〉枚の抽選券、いわゆる、マイルの〈ガチャ・チケ〉が手に入ることになる。


 隠井は、物語の舞台探訪やライヴ遠征を趣味にしているので、とかく移動が多い。場合によっては、遠方地への移動のために飛行機を利用する場合もある。そのため、日々の生活において少しでもマイルを貯めようと欲して、普段の買い物において、百円につき〈一〉マイルが貯まる『JALカード』を以前から利用してきた。それゆえに、〈歩く〉だけで、マイルがジャルジャル貯まってゆくこのアプリは非常に魅力的に思えた。

 そのため、四月の末に機内雑誌によって、JALのウォーキング・アプリの存在を知った隠井は、五月に入るや否や早速、このアプリをダウンロードし、五月一日から利用してみることにした。ちなみに、月が替わってから始める事にしたのは、最初の〈二ヶ月〉において、アプリの使用料が無料になるので、四月の末から始めるよりも、五月の最初から始めた方がコスパがよい、と判断したからである。


 しかし、マイルのためだけに、無理して徒歩で移動したり運動するようでは、あまり長続きもしないようにも思える。

 だが、これは、まったくの杞憂であった。


 隠井の日々の仕事は、とかく移動が多い。

 つまるところ、日常も休みの日の趣味も、四六時中移動しているのだ。


 結果、日々の一万歩は難なくクリアし、週のノルマの六万歩も四日目にはクリア、月の二十万歩も月の半ばで早く達成できてしまった。

 一ヶ月間使用し、五月の歩数データを参照してみたところ、五月の総歩数は、約五十三万六千歩、一日の平均歩数は約一万七千歩であった。

 これならば、とくに無理して余計に歩く事はせずとも、普通に過ごしているだけで、JALウェルネスというアプリを十全と使い尽くすことができよう。

 

 で、ここで気になるのは、一日・最低一万歩あるき続けた結果として付与される基本の〈百三十二〉マイルに加えて、〈九十八〉枚のガチャを回して、結局、月に何マイル獲得できたのか、という点である。


 二〇二二年五月の結果は、五十三万六千四百三十歩歩いて、〈五百十三〉マイルであった。


 ガチャの結果なので、月毎の上下動もあろうが、このアプリの利用で、年で六千マイルが〈皮算用〉できよう。


 国内線の移動で必要なマイルは、たしかに時期によって変動があるものの、ざっくりいうと、羽田から九州や北海道に必要なマイルは片道七千五百マイル、往復一万五千マイルである。

 ちなみに、七千五百マイルを、JALカード決済のショッピングだけで貯めようと思ったら、年会費を払った上で〈七五万円〉もの買い物をする必要がある(JALの特約店ではマイルは二倍貯まるのだが、これは計算に入れないことにする)。

 これを、JALのウォーキング・アプリは、毎日普通に歩くだけで、十五ヶ月で達成することができるのだ。

 ちなみに、このアプリの使用料金は、月々五百五十円なので、コストは十五ヶ月で八千二百五十円という事になる。

 LCC(格安航空会社)の場合は、とりあえず括弧に入れておくとして、いわゆるJAL・ANAを利用する場合、早割や先特でも、八千円代で九州や北海道の片道航空券は手に入らない。


 突然遠征する事になった場合、直前の飛行機代はお高いので、マイルを利用して移動する事態も稀に起こり得る。そして、そういう時に限ってマイルが不足していたりする。

 こうした事を考慮に入れると、月々五百五十円(税込)を払って五百マイルが手に入る、JALのウォーキング・アプリは、毎日一万七千歩平均歩いている、遠征厨の隠井には打ってつけのアプリで、飛行機の中で偶然出会った広告は、まさに思わぬ見っけ物であるように、隠井には思えたのであった。


〈参考資料〉

〈WEB〉

「【2022年】ウォーキングアプリおすすめTOP10」、『Appliv』、二〇二二年六月一日閲覧。

「JAL Wellness&Travel」、『JAPAN AIRLINES』、二〇二二年六月一日閲覧。

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