第01章 北海道
いざ、さっぽろ雪まつりへ
第2話 記録的雪不足!
新暦の正月期間に、仕事の小休憩中として、何とはなしにツイッターを流し見していたら、こんなつぶやきが目に入ってきた。
「今日の札幌、いい天気、雪は少なめです」
「雪不足、深刻。道路には雪積もってないし、大通り公園の芝見えるんだけど()。今週も雪予報ないよ」
「さっぽろ雪まつり、雪不足でピンチ」
「雪不足の札幌なう。まじで雪少ないよ。こんなんで、雪まつりできんの?」
「<雨乞>ではなく<雪乞>ってニュースみたけど、さっぽろ雪まつり大丈夫? 雪男・雪女、札幌に来てっ!」
「今年は雪がすっごい少ないの。ぼく、毎年たのしみにしているんだ。だから雪まつりが心配でならない」
記録的な雪不足のせいで、北海道内各地では、たとえば、オープンできないスキー場があったり、スキー大会のジャンプ部門が中止になったり、網走市の<あばしりオホーツク流氷祭り>では雪像の制作が中止されたり、美幌町では<びほろ冬まつり>それ自体が中止になったりと、幾つもの冬の催しが暖冬の影響を被っていた。
こういった状況下、毎年、二月の上旬に札幌で催される<さっぽろ雪まつり>の開催を、ツイッター民の中には危惧している者が数多いたのである。
一月八日付の新聞では、一月七日に、さっぽろ雪まつりの会場の一つとなる大通公園の七丁目において<雪輸送開始式>が催されたことが報道されていた。
今回のさっぽろ雪まつりでは、百四十基の雪像が制作予定で、そのために必要な雪の量は、約三万トン、すなわち、五トントラックで約六千台分になる。
雪まつりの際には、雪像制作のために必要な雪が、札幌市内の真駒内(まこまない)駐屯地に司令部を置く陸上自衛隊の第十一旅団の協力によって会場に運び込まれる。例年、札幌市内の里塚霊園や滝野霊園、モエレ沼公園などの札幌市とその近隣市町村の約十ヶ所が雪まつり用の採雪場所となっていた。
実は、一月上旬の札幌の積雪量は、平年、四十四センチメートルなのだが、今年の同じ時期の札幌の積雪量は九センチメートル――例年の約五分の一、この積雪量は一九六一年の統計開始以降でもっとも少なく、これでは、札幌市内の採雪場だけでは雪像制作のために必要な雪を確保できない。そのため、たとえば、札幌の西に位置している、虻田郡(あぶたぐん)の京極町(きょうごくちょう)や倶知安町(くっちゃんちょう)などから雪を輸送していることもまた報道されていた。
<さっぽろ雪まつり>は、一九五〇年に第一回が開始されて以来、これまで一度たりとも延期も中止もされたことがない。だからこそ、運営側は、様々な手段を用いることによって、今年で第七十一回目を迎え、国内外から二百万人以上が訪れる<さっぽろ雪まつり>の開催に向けて尽力していたのだった。
――たとえ、暖冬ゆえに札幌市内に雪が不足していたとしても。
仕事の性質上、十二月から一月、そして二月の初頭までが隠井の年度末の超繁忙期に当たる。したがって通常よりも一ヶ月遅れ、旧暦の正月の時期になってようやく、隠井は正月気分を味わえるのだ。もっとも、今年、二〇二〇年の旧暦の正月は新暦の一月二十五日に当たるため、旧暦の正月が来ても未だ仕事は山積みではあったのだが。
とは言えども、二月三日、今年の節分の日には年度の仕事を片付け、その翌々日、二月五日から、<主観的>に正月を迎えた隠井は、一週間ほど東京を離れることにしていた。実は、毎年、年度の仕事を終えるや否や札幌に赴き、ちょうどこの時期に開催されている<さっぽろ雪まつり>を訪れたり、市内や近郊を旅するのが、ここ数年の隠井の恒例行事になっていたのだった。
参考資料
「積もってもすぐ解ける…札幌、記録的な雪不足」,『讀賣新聞』オンライン,2019年12月26日付、2020年2月15日閲覧.
「雪不足の札幌、雪まつり開幕までに「トラック3千台分の雪」搬入,『讀賣新聞』オンライン,2020年1月9日付、2020年2月15日閲覧.
『さっぽろ雪まつり 公式WEB』,札幌観光協会,2020年2月15日閲覧.
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