暴かれた物
「月ニイ、結局はお姉ちゃんに頼っちゃうんだから……」
ケイが調査データを精査している間に、
「仕方ないさ。わからんことは専門に投げるのが一番良い」
「僕だってA.S.F.に乗ってるのに」
「いや、
「ほら、また」
迂闊な事を言った
「すまん」
「ケイちゃん反撃も出来なくなってるし、大丈夫かな」
それが無茶を言った
「時間、掛かってますね」
エレインも同意見のようだ。
ケイを信用しすぎだろうか?
だけど――
「あいつは……余計な事考えられないぐらい没頭してる時の方が、本気が出るんですよ。本人もきっと気づいてないだろうけど」
そう自分に言い聞かせるように
どちらにしろ、今は時間も知恵も足りない。
――それでもし、彼女が撃墜されたなら?
嫌な感覚がフラッシュバックして「ケイ」とその名を呼び掛けた時、思考と演算を終えた彼女から通信が入った。
「
「えっと……」
「行け、
「はいッ!」
唐突な事に戸惑った
素直な彼女は直ぐに戸惑いを捨てて、
「リニア・ダスト・ラムジェット、
【リニア・ダスト・ラムジェット、巡航モード。トリガー】
解放バレル式のリニア・ダスト・ラムジェットの砲身に、空中固定された細長いカートリッジ・アレイが形成され、それをカタパルト・レールにして
弾けるように銀の機体が上昇した。
「無茶を言った。すまん」
「何言ってるの
「また『マズい』か……いったい何が……」
それはおそらく、スレイプニルの関係者全員が、ずっと感じていた違和感だったのかもしれない。
一度目の襲撃はニール博士が標的だと思われていた。しかし、その後大した研究を行っていたわけでもないスレイプニルを、彼らは再び襲撃した。
何とか退けたことで、
しかしグラードほどの大国が、何の理由もなく極東のベンチャー企業に強襲を掛けるわけがなかったのだ。
*
「成層圏に突入! トリス! まだいける!?」
リニア・ダスト・ラムジェットで対流圏を突破した
対流圏を巡る様に設計されている
【
返事をしたトリスは、普段の抑揚を持った喋り方ではなく、機械合成の無調律音声のような平坦な声で答えた。
トリスの出力低下の影響で、
「もう少し、もう少しだけ頑張って、トリス……!」
『ハッブルの瞳』が映し出す映像を、
「何が、グラードに何が……普通の基地じゃない、お姉ちゃんが『ハッブルの瞳』でと言うんだから……きっと」
【出力低下に伴い、演算能力が低下しています――】
「ダメだよ、トリス。気をしっかり持って!」
単なる状況報告なのだが、まるでトリスの弱音のように聞こえて、
「
【――
トリスの姿にノイズが走る。粒子センサネットワークから離れすぎて、トリスの映像を投射している
「
「おーけー、今送る」
エレインの方を見ると、彼女が明後日を向いて端末ボードの陰で小さくVサインをしていた。
「トリス、データ照合……大丈夫?」
【リソースが限界――いいえ――大丈夫です――】
酷いノイズが走る体と、赤い警告色の瞳で、トリスはそう答えた。
「ピックアップ」
【照合――開始】
無数にあるグラードの旧基地施設。それらを光学レンズで一つ一つ覗く作業。
「
珍しく焦れたケイの声。
「高高度で
「君の調律したトリスがそう簡単にフリーズするわけないでしょうが。
ケイはそう言いながら、未だ
「ケイが足止めされてなければ……」
「見つけた! 見つけたよ月ニイッ!」
【映像――転送――機能停止――シャットダウンを処理――】
送られた映像を最後に、
「
通信途絶に動揺して叫ぶ
「――
「オイ
「今それどころじゃ……一体なんだって――」
通信の途絶した二人の事が気になりながらも、しぶしぶと振り返った
「演算電磁波による世界災害。その報復に使おうとされて、A.S.F.が封じ込めた旧世界の遺物――大陸間弾道ミサイル……弾頭は恐らく……『核』……」
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