古巣を後に
「ええー!? ケイちゃん、そのまま帰っちゃうの?」
ケイに離陸許可を求められた
そうは言いながらも、阿佐見は
「すいません
「いやいや、そんな気にしないでケイちゃん。まだスレイプニル社の社員だからね」
「え?」
「
考えてみれば、ここ数カ月、雇用形態はおろか、給与明細すら目を通していなかったことを思い出してケイは愕然となる。
甲板員の退避地点に大人しく立っている
「あー……」
「だからね、いつでも帰ってきていいのよ?」
「大丈夫ですよ。この一件が終われば……」
自分は、スレイプニルに戻れる……のだろうか?
古巣を見る目で空母の艦橋を眺めても、さほど感慨は湧かず、それは他人の家のように思えた。
帰って来られるのだろうか? だが何のために?
ずっと目標にしていた父の背中が失われ、思い描いていたものがやけに脆く、あっさりと色あせてしまって以来、未来を予測は出来ても、造り出すことが出来なくなってしまった。
だけど、それに寄りかかることは出来なかった。
失われた過去にすがるのではなく、自分の足で前に進まなければならない。例えそれが、
「ケイちゃん?」
「もう行きます」
「りょーかい――艦内各位、ケイちゃんが出発します。お見送りする人は急いでね。甲板では所定の場所から出ないように」
そう、
ドヤドヤと、
そんな中、甲板員が一時停止の合図を振った。
見れば技術部主任の
「ケイちゃん、
そう
「ケイちゃん、これ」
「これは?」
「トリスの
「それと?」
「内緒にしろって言われたんだけどね、そいつには
技術屋として、正体不明のデータを渡すことは
秘密をバラしてしまった
「わかりました。入れておきます。デュプレのデータ、後で送りますね」
「助かるよ。それじゃ、気を付けて」
「はい。
「
通常のカタパルトで
*
「引き留めなくてよかったのか?」
「こっちで研究するように誘ったけど、振り払われた」
振り払われた右手を思い出して、手のひらを見つめる。拒絶されたことよりも、ケイが誘いを蹴ったその理由を考えていた。
「なんだ、フラれたのか」
「なんでそうなる」
「口説いて袖にされたんなら、フラれたって言わんか?」
「ああ……いやまあ、そうなんだが……そもそもアイツはなんで泣いてたんだ……」
ケイの、去り際の表情を思い出して、
「あのケイちゃんが、泣いてた!? 何言ったの
横で話を聞いていた
「心当たりがないから困ってんですよ……」
「
そう言ってエレインまで混じってきて責める。
「いや、本当に俺のせいじゃ……ないと……思いますけど……」
「あ、通信。
「連絡が行ったんだろう。映像、出してくれ」
「貴方たち大丈夫?」
慌てた様子はなく、気のない言い方で
本当に気にかけていないのなら、戦闘があったとは言え、カドクラの重役が直接様子を伺うなどしないだろうから、
「
「アドラーから哨戒網を突破したA.S.F.の情報が入ってきて、本社の安保が大騒ぎしていたから、
「いえ、それが無かったら本当に危ない所でしたね。グラードの狙いはどうやら
「
「『あんなもの』って……
その言い様を、くっくと笑いながらエレインが窘めたが、
「ああ、ゴメン。後で謝って置いて。それよりも今は、
「え、私ですか? それだったら
急に話を振られた
「そういえば、ケイちゃんから何か聞いたんじゃないのか?」
それに
「なんで、この手の会議に居合わせると、いつも話が俺の方に来るんだ……」
「それだけ
とエレインが笑い顔でフォローを入れてくれるが、去り際のケイの表情を思い出してしまい、思わず頭を抱える。
結局、
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