洋上会議室
「グラードはまだ諦めていないと。それに、向こうも同じ、というのはどういう事かしら……
「ええ、また私ですか? あーんー、ケイちゃんの話を聞く限り、今回の襲撃は
カドクラのトップに対しても、いつもの態度を崩さず応じる
「加えて、アドラーを刺激しすぎない為にA.S.F.一個飛行隊だったとしても、公表で倍の数のA.S.F.を有するノースポイントを襲撃するにしては、無謀な作戦に見えますね」
エレインは今回の襲撃をザックリ纏めたデータを、全員の端末に転送しながら言った。
「それにしても、なんでアレを?
納得のいかない様子で
「超長距離で狙撃されると困る施設があるとか……それにしても、グラードが前回行ったように、一旦、電子戦闘空域を成立させる必要があるか……わざわざ後方から狙撃させるぐらいなら、A.S.F.の特性から考えても、前に出した方がマシですね」
「
博士のアルテミス計画の為に必要な技術なのであって、それ自体は粒子センサネットワーク敷設以前の航空力学の再現なのだから。研究の価値はあったが、一度は枯れた技術なのだ。
「
エレインがまとめた資料と以前の襲撃の資料を突き合わせていた
「
その雰囲気に飲まれて、場に不思議な静寂が流れた。
「元々……元々?」
「
「あー!」
資料を表示した端末を見つめながら、
「え、何?」
その様子に映像プレートの向こう側で、
「グラードの狙いは、元々は単なるVer2.00の妨害だったとして……どこかの時点でグラードの作戦目標が変わった?」
「どういうこと?」
「最初の襲撃。アレは初めからVer2.00開発を『遅らせること』が目的だったんじゃあ……? あの時の戦力も『電子戦闘空域でスレイプニルを潰す』っていうより、潜入部隊の方が主体……?」
「ちょっと待ってくださいよ
思わず、
「
その
毒気を抜かれた
「ドンマイ、
話の腰を折られた本人の
「グラードには
「そして、それは恐らく『うまく行き過ぎた』んじゃないでしょうか? ……何せ、計画の主導者であるニール博士の殺害に成功したんですし」
「はい、
「たしかにあの装備と練度の部隊相手に、自分と
と補足した。
「……ニール博士のエコーは、博士が当初予定していたよりも、計画の進みが早いと言って居たな」
「そうすると、再び強硬手段を取った今回の襲撃は……」
「……でも、そこからどう
ようやく話が進展の見込めそうなところに来たところで、
「元情報将校の知恵と見識で何とかならない?」
「なりませんね――どちらかと言うとコレ、
「だから、困ったら俺に振るのやめてください
「これ以上は出ないか……それじゃあ、スレイプニル社の今後について話しましょ」
「今後って言ってもどうしましょうか? ウチとしては、このまま
「
言葉の割には咎める雰囲気はなく、茫洋とした表情が
「……いや、どうでしょう。軍事は分かりませんけど、俺らはこのまま開発を進めるべきだと思います。ここで手を止めると、何か……ダメな感じがしませんか?」
「スレイプニル社の今までの投資もあるのだろうけど……利益優先という訳でもなさそうね。でもそうなると、安保関係の予算がねぇ……どうするか」
「ああ、それ、
「私なら?」
「ノースポイント
そういえば、そもそも空母社屋スレイプニルは、地上工作部隊の潜入対策に導入したモノだったのだ。
実はと言えばこの会議間中、
「そ……そう言えばそうだったわね……」
一生の不覚と言わんばかりの顔で、エレインがガックリと
「ノースポイント
「あそこは確かにカドクラの所有だから……捻じ込めると思うけど、
「でも、
事も無げに
「ケイちゃんも居るし、ウチとしても当てにしやすいですね」
と追い打ちをかけた。
「あなたたち……まあいいわ。
「ウチも結構頑張ってるつもりなんですけどね」
「頼むぜ
「だからなんで俺に振るんだ」
ただの研究職で居たい
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