ケイの救援
「何で
中空の
「すまんケイちゃん、
今回ばかりは、
「いや、いい
「未完成ですって!?
「いや本当に済まない。ソレは後で改めて謝るから、それよりも話を聞いてくれ。お前の所見が聞きたい」
「なら急いで言って。謝って済むうちに」
ケイが鬼気迫る顔で怒鳴る。
こうやって喋っている間にも、
性能も空戦機動も癖もすべてエミュレートされて丸裸にされた状態だが、それでもトリスと共に辛うじて相手の予測を上回り、食い下がっていた。
しかし、ケイの
「あの
「ケイ、あの
計測限界値の情報処理IQ保持者『アンサラー』
その能力の本質は
感性に頼る
「
苛立った声。
「あ……スマン。だが、今はそんなことを言って――」
「――あれ以来、フェザントやカドクラに対して諜報戦を主体にしていた
「……既に
「なら、やっぱり
「社長……私たちが『何故そんなものを』って思うのは、自分の視点や状況を比較シートに使っているからよ。本来、比較するのは相手の視点や状況。ただし、
ケイは
「……そうか……
と、素直に喜んで褒めてくるものだから、
「でもそれじゃあ、グラードの目的って、何?」
と、
「それが分かれば苦労しない……ってオチか」
「所詮、
不甲斐ない自分。それを悲しむような表情を一瞬見せた後、
「おっけい、繋ぐよ」
話している内に、レーダー上、
息をのむ艦橋。
「――
「お姉ちゃん!」
【ロングレンジ・ホーミング・ザッパー、Fox-Two】
黒い機体を保護しているバリアブル・アレイには、
と言っても、グラードの
だが、コンマ以下のタイミングを観測する事が出来るケイにとっては、不意打ちに生かせる性能であった。
「トリス、お姉ちゃんのザッパーに合わせて仕掛けるよ!」
【耐Gコントロール、スライスバック】
不意に飛来した赤いザッパーに、遊佐を追う三機の攻撃の手が一瞬止む。
リソースを防御へ回したせいだ。
旋回する
三機はフレア・アレイを撒きながら散開していた。
絶好のチャンス。
敵三番機に狙いを絞り――
【リニア・ダスト・ラムジェット、点火】
「ちょいさぁッ!」
急接近から、すれ違い様の近接射撃。
敵三番機が強引なバレルロールで辛うじて位置をずらし、身を躱そうとするその翼を、夜空の闇ごと、蒼い光線が切り裂いた。
「――外した!?」
「かすめてる。十分よ遊佐――それにしても……
「まだ未完成だけどな」
翼を失った敵三番機は、
十分なダメージだった。
それに、被弾した
「あの時の黒い奴か!」
敵の一人がオープン・チャンネルでそう叫んだ。
「――あの時……あの時の?」
昏く、ドロリとした感情がケイの口から零れる。
次の瞬間、二本の赤い
不注意な発言をしたパイロット――アンドレイの乗る
その間を逃さず、
その悠長とも云える攻撃に、シールド二枚で防御出来るものを、アンドレイは何を思ったか、早々に
そして
理論上、十分回避可能な攻撃。そしてA.S.F.戦において、
回避可能な攻撃は回避する。アンドレイの選択は、基本としては間違っていない。
しかし基本的選択ゆえに、二重螺旋を描いていた閃光の刃が、突如狙いも定めず不規則に機体周辺で振り回される事を予測できなかった。
「なん――」
アンドレイは最後までその言葉を言うことが出来なかった。
運悪く、赤い閃光は
「アンドレイッ!」
敵隊長機の悲痛な叫びが響く。
*
「本部、例のアンサラーの急襲を受け、三番機被弾、二番機が撃墜された。作戦の続行は不可能。離脱する」
ヴァレリィが本部――マロウ局長へそう告げる。
応答は返ってこない。
その間にもヴァレリィは、ブラドをカバーしつつ離脱軌道に入った。
黒いA.S.F.――
「了解した。帰還しろヴァレリィ――航空宇宙局からの通達があった。プランBへ移行する」
マロウ局長が、遅ればせながら、押し殺した声でそう言った。
決断を迷うなど、彼らしからぬ事であった。
「どういう事だ、局長」
「先ほどの交戦データから、航空宇宙局は直接打って出る気になったようだ。気にするな……こうなる予感はあった」
「次は電子戦闘空域では済まないか……」
「体裁だけは整えるだろう……が、おそらくお前も出ることになる」
「アンドレイの代わりが必要だ」
無念そうにヴァレリィは言った。
「早急に用意させる。機体もだ。作戦までに我々も戦力を立て直す必要がある」
マロウ局長は思いつめた顔で、ヴァレリィにそう告げたのだった。
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