AIGIS
高度を取る遊佐の
それを追従するように、三機の
それに対し、
背後に迫る三機の最後尾を強襲しようとするが、先頭の隊長機から放たれた、
攻撃を失敗した
これで二度目のアタックだった。
「また、失敗……!」
【敵隊長機は小隊防御に徹し、両翼二機が波状攻撃。模範的なアロー・フォーメーションです】
トリスの報告通り、隊長機の攻撃に追い立てられて
状況は再び、上空を取る
「マズいわね」
ポツリと
「どういうことです?」
「……あ、そうか。ケイちゃんじゃないって、そろそろバレるな」
と、
「だからどういう事だ?」
「ケイちゃんが――
ケイの戦闘経歴をほとんど知らず気づいていなかった
「トリス、こっちの戦力を解析された! 攻勢が来る。防御を優先しろ!」
【管制指示了解。リソース配分、防御アレイ優先へ変更】
「ちょ、月ニイ、勝手にトリスを使わないで!」
「遊佐もだ。相手の攻撃に備えろ、一気に来るぞ」
しかし
【敵機、ブースター・アレイ展開】
「うわ、ホントに来た! 確か、三機編成の先頭がブースター・アレイを使った場合は、後続二機が、攻撃――」
【後続二機、ホーミング・ザッパー射出】
遊佐の読みに被さって、再びトリスの音声。ホーミング・ザッパーはけん制。フレア・アレイで躱すとして、その後の択は二つ。
一つは、高度を速度に変換するスライスバックやスプリットS等の
もう一つは、回避しながら高度を稼いで優位を維持するシャンデルやインメルマンターン。
「リニア・ダスト・ラムジェット、再点火!」
【耐G限界間近です
「ギリギリ一杯まで速度を稼いで、普通に上昇したら食いつかれる!」
【了解、下半身を加圧固定。バイタルチェック常駐、血圧コントロール。コックピット内酸素濃度調整。ただし耐G調整不足により、ブラックアウト
「十分、一気に上昇して振り切るよ! フレア・アレイ放出!」
*
「ヴァレリィ隊長! 奴は
「――この弱腰、あの時の
「アンドレイ、油断をするな。あの黒い機体のパイロットでなくても、こいつは準アンサラー・クラスだ」
慎重な性格のブラドが窘めた。
正反対な二人の意見を吟味し、ヴァレリィは決断する。
「……各機、様子見はここまでだ。仕留めに掛かるぞ」
爆発的な加速で上空へ逃げる
「クソ、上昇性能が段違いだ!」
アンドレイが叫ぶ。先ほどからこの性能差を巧く使って、逃げ回られていた。機体後部に取り付けられた
「アレが航空宇宙局の警戒する
確かに、その加速力――特に上昇性能は凄まじいが、逆に言えばそこまでの代物だ。
「何を隠している、マロウ局長……」
ヴァレリィは、他の部署の機密を知る立場にはない。諜報局員としての矜持から、その事に疑問を持ったこともない。
だが、このフェザントに纏わる一連の任務に、ヴァレリィは長い間、違和感のようなものを感じていた。
理由は分からない。諜報員としての勘のようなものでしかない。だが確かに、噛み合わないボタンのような違和感が引っかかっていた。
【敵機、ブレイク】
「来るぞ! 各機迎撃!」
ヴァレリィ機は垂直上昇のまま
自立シールド・アレイが、レーザービームのような
スライサー光が途切れたのを確認して、ヴァレリィ機は
更に後続の二機が、必殺のタイミングで
「クソ、アレを回避するのか!」
アンドレイがコンソールを叩かんばかりの勢いで叫ぶ。
「いや、カミヤならば、すれ違い様にもう一撃されていた。問題ない、このまま追い立てるぞ」
アンドレイを鼓舞するように言いながら、先に旋回して
旋回した先で、再びアンドレイ、ブラド機が
しかし今度は
あのブースターとして装備された
だがそれも時間の問題。以前、ヴァレリィ達も行った地点維持の為の防衛空戦機動――しかしそれは、
【敵機パラメータ解析完了しました。比較表示。加速ステータスが本機を遥かに上回っています。エミュレート補正中】
「解析が終わった。各機データリンク、次で仕留めるぞ」
上昇する
*
「くっ!」
急上昇する
直撃ではないもののバリア・アレイの耐久値が大きく削られ、再構築に
慌ててブレイク。
しかし、
バレルロールからの急加速で、危うく回避。
相手の攻勢は激しさを増し、反撃の機会はほとんど失われていた。
加速力の差を生かして強引に差し込もうとしても、常にリソースを余らせている敵隊長機の迎撃や防御に阻まれる。
「そろそろ、解析されたかな? 月ニイ」
追撃のホーミング・ザッパーをフレア・アレイで躱しながら、
息が荒く、脈も高い。スレイプニル艦橋に表示された
「戦闘経験豊富な
「ダメだよ月ニイ。僕はまだ戦ってる……戦える。この三機の編隊を崩すのは無理かもしれないけど、せめてフェザントかアドラーの援軍が来るまで持たせれば……」
【
「了解」
「トリス!」
【……目的の為、私は自らに限界以上のスペックを要求しています。これはエラーでしょうか
「トリス……お前……」
再び襲ってきた
それらすべてが、今は亡きニール博士の謀りにすら見える。
「しかし……」
今の
だが、その推力を最大限に引き出すには、コックピット内の
トリスの基本戦闘調律を優先した、そのツケが回ってきていた。
今となっては、
「
それに応じたのは、新たな機影を捉えたトリスの言葉だった。
【新たな
そこで一瞬、トリスが言葉を詰まらせたように感じたのは、
【――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます