洋上の会敵
「
【機体制御モジュール良好。
コックピット内に、銀色のスーツを纏ったトリスの姿が投影される。
「発進シークエンス、オールグリーン。ヨーコちゃん、いつでもいいよ」
「いくよー! 一番カタパルト、ASF-X03S・フェイルノートS型、発進ッ!」
大仰な物言いで、
離陸。
月夜を銀の翼で切り裂いて、
「リニア・ダスト・ラムジェット、ON」
【
トリスが告げると、
空中映像プレートやシールド・アレイと同じ原理で空間座標に固定した加速用弾体アレイを、
電磁加速レールで十分に速力を稼いでいた
「
「了解だよ、月ニイ」
「落ち着いてるな……
「そりゃメンタル面は、オンオフ自在になるよう、
右手を挙げて二の腕を叩くポーズをしたのは、隣に座っている
「
「高度を維持したまま、スレイプニル上空を防衛旋回します。向こうが動くまではこのままで良いんですか?」
「
「了解」
やや緊張した面持ちで言う
「
「戦闘指揮なんて、専門外だしな……それにケイちゃんならともかく、
「――社長? お姉ちゃんならともかく、ってどういう意味?」
空中映像プレートから、器用に
「あー、いや、アレだよ。そうアレ。戦闘経験の差があるだろう」
「いいですけどね、みんなしてお姉ちゃん、お姉ちゃんって」
「拗ねるな拗ねるな」
塞ぎ込んでいたの時の印象を引きずっていたせいか、
「まあ、
「わかってるよ月ニイ」
【敵機直進。
「
「――2……1……エンゲージ!」
【電子戦闘空域の成立を確認、トリガーロック解除】
スレイプニル社上空での、二度目となる電子戦闘空域。今回は接触のみで終わるはずだが、それでも艦橋には緊張が走った。
【敵機、ロングレンジ・ザッパー、射出】
「
トリスの報告と
「どういうことだ? グラードの狙いはアルテミス・ワークスじゃないのか
「いや、あたしに聞かれても……」
九朗が思わず、元軍人の
「――遊佐、回避だ!」
「もうやってるよ!」
【回避運動、フレア・アレイ――リリース】
「向こうの勘違いってことは……ないよな」
「グラードの
「奴らの狙いは
未だ信じられないと言った顔で、
それを聞いた時は、
「
独り言の中から、
「なんだ?」
「あの『ハッブルの瞳』博士のなんか虎の子の研究だったりとかは――」
――スパーーン!
小気味のいい音を立てて言葉を遮ったのは、エレインの持っていたボード型の端末。
それが
「社長、シ・ゴ・ト、してください」
エレインのアンダーフレームの眼鏡の下に光るのは、見たこともない野獣の眼光であった。
「す、すまんエレイン」
余計に狼狽えて、
「
端末ボードを構えてエレイン。尚、強化プラスチック製の民生品ではなく、軽量合金製の軍用品である。絶対に痛い。
「あ、はい――動揺するな
成り行きでひどい流れ弾が飛んできたので、
「
しかしソレでお互い、肩の力が少し抜ける。
「
いつもの余裕のある社長然とした……かどうかはともかく、いつもの
「三人のコントを聞く余裕がある程度にはね」
珍しく辛辣な
だが反撃は出来ないまでも、追い立てる三機のA.S.F.のザッパーを十分に捌いて見せていた。
「やっぱり
「ない筈だ。甲板にも艦内にも、監視用の光学カメラが満載。
遊佐の戦闘をつぶさに見ていた
そもそも空母を社屋にしたのが、工作部隊への対策の一環なのだから、やすやすと侵入されるようでは話にならない。
ならば理由もなく勝機を逃す相手ではないはず。実戦経験のない
何かを警戒している。
「連中の警戒する要素……以前の戦闘の事を考えると、Ver2.00の
「よし、遊佐ちゃん、そのままケイちゃんのフリを……ふご」
そんなことを言いかけた
「そんなこと言って、
「いやいや、
エレインの手を引きはがした
「社長、女の子は繊細なんです。そういう無神経はどうかと思いますよ?」
と
「
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