#25


 【同胞殺しは、大罪だ。我らに誕生の名を授けし母に背く愚行うらぎり


 裁きを以て、償わなければならぬこと。】





 生まれてくるすべての魔女は、施設でそう教えを説かれた。



 メロの死の報せを受けたのは、彼女の死からシルビアが施設を訪ねた五日後ことだった。

 シルビアはその事実を受け入れ難かった。メロが死んだ? あんなに優しい娘が?


 親友の死の理由を問い詰めたが、真実を知る者はいなかった。

 自殺などと、ほざく輩も少なくない。あの笑顔を絶やさなかった娘が、自殺なんてするはずがなかった。事故か、殺されたか……。


 悲しい死が、なくなるように————そう言って、この世に生きる人々のために尽力していた。魔力の母は結局何も見えていないのか……。





 こんな世界が、どうしようもなく憎かった。


 優しいあの娘を殺したこんな世界が、赦せなかった。


 あの娘を見殺しにしたこんな世界など、罰を受ければよかった。




 あの娘のためなら、あらゆるすべてを犠牲にするのも厭わない。

 そしてシルビアは、一般には禁じられる黒魔術に手を出した。真実を得るために。

 魔界の刑事事件を扱う捜査機関の特権とされている複雑性と危険を伴う魔術だが、シルビアには造作もないことだった。死体を盗み、身体の一部を刻んで、目玉を取り出して、その人の記憶を覗く。手順や加減を間違えれば、その反動で黒魔術の呪いが降りかかる。

 静かに眠る親友の死体を前にしても、シルビアは落ち着いていた。必要な素材を取り出すときも。こんなにも心は悲しんでいる。真実を知るまでは、心を殺すこともできた。


 シルビアはすべての真実を知った。そして親友の最期を知り、彼女は生まれて初めて泣いた。

 人知れず助けを求めて殺されてしまった親友の記憶に、わけがわからない嗚咽が漏れる。



 やっぱり、殺された、あの娘は、あの施設にいた奴らだ、昔、メロを虐めていた……。


 ドブ以下の魔女め……。



 恐らく薬になる実の栽培に、あの娘は一人で人気のない森を訪れた。

 そこで、奴らに遭遇してしまった。そこではひっそりと違法薬物の売買が行なわれていた。偶然見てしまったのだ。彼女は偶然殺された。




 悲しい死がなくなるように。


 そう願った健気な娘は、理不尽に死んだ。

 あの娘の笑顔が、好きだった。その娘はもうどこにもいない。



 こんな世界に、ただ失望した。


 壊れてしまえ、こんな世界。



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