第2話 はじまり、はじまり
02
街の陰、ローブの男は自身の手にしたジェムに手をかざした
「・・・なるほど、これでこちらの言葉は覚えた」
雑踏の中、ルフトゥーンの夜はいつものように騒がしく、この男一人が隠れることなど造作もない。
「・・・・さて」
目立たない裏路地、人のいない場所で、男は手をかざす
「habvjlkgebk」
男がぼそぼそと何事か呟くと、景色がぐにゃりと歪んだ
「この街に扉を置かせてもらう」
にやりと笑った男の背後に、青いローブの、また別の人間がたっていた。
「・・・どういうつもりです.、ウヅキス」
「・・・裏切り者を消したのだ。なにも間違いはあるまい.。イトゥイソ」
新たな人影に驚いた様子も見せず、ローブの男、ウヅキスは続けた。
「我らの世界の魔力はもう枯渇を始めている。その解を外に求める。そう結論した」
「・・・・元老院がそれを許すはずがありませ・・・まさか」
「・・・ああ」
ウヅキスがローブの中から、「なにか」を、ぼとぼと、と落とした
「ひっ・・・・!?」
ぐちゃぐちゃになったそれが「眼球」であることに気づくのに、時間はかからなかった
「すでに『喰った』よ。残りはお前だけだ。イトゥイソ」
「元老院んを・・・な、何が狙いです!?!?」
「・・・・復讐、もしくは再会、だよ。それを君が見ることはないが」
ウヅキズはローブの片手を、イトゥイソのほうにかざす。
「・・魔法では、貴女にも引けは取りません。従一位!!」
従一位、それは、『世界』においての最高位の魔導士に与えられる称号。
それを超えるものは無く、並ぶ者すらない。
「その階位はな」
手に魔力の光を宿して、迫るイトゥイソに、ウヅキスは悲しそうな目を向ける。
「すでに捨てたのだよ」
ウヅキスの手に魔法はなく、あるのは黒い鉄の塊
この街では、ありふれた破裂音が響く。
路地裏には、青いローブを着た死体だけが残った
「我 最高階位 従一位を捨てるものとする」
「並びに、滅びゆくこの世界に、私がトビラを繋いだ」
「新たな場所にて、新たな栄光をつかむことを」
「ここに奨励するものとする」
「いざ、新たな地へ」
「すべて、我々のものにしろ」
魔法による強制テレパシーによって、この文章は『世界』の魔導士にすべてに届けられた。
滅びかけた世界を捨て、新天地を求める魔導士たちは、次々にトビラへ飛び込んだ
その先にあるのは、欲望にまみれた、悪逆の街とも知らずに・・・・
発 「師団」
この街に異分子共が紛れ込んだ
勢力関係なく、この異分子を狩り、その手にした物を少佐に届けよ
報酬は金塊1トン、各種薬物の取引権
この泥の街は、ここに住む我等のものである。
「異分子」を
狩り尽くせ
少佐
ジェムがとられた翌日に発表されたこの文章は、ルフトゥーンを狂乱と歓喜に陥れるには十分だった。
褒美をそのまま狙うもの、「少佐」のねらう物をさらに高値で売ろうとするもの。
ただ享楽として受け入れるもの。
しかし、その狩るべき対象が「虎」であることを、誰もまだ気づいていないのである。
後に、「最初のページ」と呼ばれるこの日は
こうして、狂乱と熱狂の中、幕を開けたのである
映画サバV プロローグ @oshiuti
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