6章 乙女座

 眩しい……朝か。

 相変わらず意識が定まらないが、なんとか今日が休みの日だと気づく。

 今日もいい陽気だ。明るい真っ白な光が世界を照らしている。今日もいい事ありそうだ。


 喫茶店のテラス席を見ると、今日も美しい女性が座っている。

「今日もいい陽気ですね。相席してもいいですか?」

 彼女はクスッと笑い。空いてる席に手を向け、頭を軽く下げる。僕もそれに答え、彼女より頭を下げ席に着く。彼女と話すのは久しぶりだ。

 この前は楽しくて、暗くなるまで話し込んでしまった。今日はその時間の続きをするつもりだ。

 僕が切り出す前に彼女から質問される。そう、この前のように。

「友達とはどういうものですか?」

 改めて説明するとなると、凄く難しいことを思い知ったが、自分なりに説明してみる。

「一緒にいて嫌じゃない人かな? んー、分かりやすい説明が凄く難しいけどね」

 そう答え後、僕の友達のことを彼女に紹介した。

 友達と何をしている時が楽しいのか、これまでの楽しかった思い出など、様々なことだ。それを聞く彼女は前回と同じ。目を輝かせ聞き入ってくれる。


 ここまでされると、ついつい話し過ぎてしまう。彼女は退屈ではないか? とも思うが、そういう雰囲気を全く感じさせない。逆に話すことを辞めてしまうと怒られそうだ。

 そんな彼女を見ていると、小さな子供が昔話ををリクエストする姿と重なる。身を乗り出し、身体を揺らしながら「今日は何のお話?」という感じだ。その後も昔話をするように、友達について話す。

 気づけば、あたりが暗くなりつつあった。そろそろ、話を切り上げようと思い。彼女に今日の限りを伝える。

「僕は君の事を友達だと思っているよ。もし、君も同じ気持ちなら、これが友達じゃないかな?」

 それを聞いた彼女は、とても嬉しそうに「私達、友達ですね!」と答える。

 その後、僕はこの前と同じように、別れの瞬間を切り出した。

「今日はもう遅いから、また次の機会にね」

 そういい、席を立つ僕。それを彼女は黙って見つめている。見つめているというより、『観察している』というのが適切かもしれない。

 その場を後にするため、僕はまた一歩踏み出す。

 彼女と別れた後、僕は前回と同じように眠くなり、目の前の世界が徐々に見えなくなっていく。


 僕はその暗闇の世界へ消えて行く。

 次に出会う光の世界ために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る