第9話 鬼ごっこ
「じゃあ、グラウンドで鬼ごっこしなくちゃなんないの?」
「そうなるだろうな」
「で?鬼ごっこしてどうなんの?」
田中君がちょっと怒りながら言った。
「鬼ごっこの終わらせ方に明確なルールがあれば、それをクリアすればいい。
なければ知らんな」
カンナギ君が突き放すように言った。
「なにそれ!ちょっとひどくない?」
吉川さんがカンナギ君に詰め寄った。
「そもそも、お前らが華子さんを呼び出したんだろーが。俺に八つ当たりされても困る」
みんな黙ってしまった。
「カンナギ君!君はなんでこっちに来たの?最初に言ってたよね。目的があるようなこと」
僕は最初から気になってたことを聞いた。
「俺の目的は華子さんを浄化させること」
「浄化?!」
「そ。ちなみに、俺は華子さんの遊びのメンバーに入ってないからな。鬼ごっこをするのはお前らだけだ」
「「「「「えぇぇぇ!?」」」」」
「なんだよ。そうだろ?華子さんを呼び出してこの状況を作り出したのはお前らだ」
「じゃ、じゃあ今、華子さんを浄化させてよ!」
吉川さんがカンナギ君に詰め寄った。
「お前らさぁ…遊んでて、さぁこれからだ!って盛り上がり始めた時に“もうおしまい。帰りなさい”って言われて素直に帰るか?」
「え?時と場合によるけど、素直には帰らないかも?」
「だろ?それと一緒。俺は遊ぶために来たんじゃなく、あるべき所へ逝けってする為だけに来たからな」
「え…じゃあ、どうやって終わらせるか分からないまま僕らは鬼ごっこをし続けなきゃいけないの?永遠に?」
「そうだよ…と、言いたいところだけど、お前らが遊んでる間に必要な措置を取っておくから、終わるまで死なずに頑張れ」
「そんなぁ…」
「自業自得だ」
うぅ…カンザキ君つめたい。鬼!ろくでなし!血も涙もない冷血漢!!
「お前、失礼なこと考えてるだろ?」
「え?いや、そんなことないよ!全然!まったく!!」
カンザキ君が疑いの目で僕をジロッと見据えた。
「それだけだとお前ら確実に死ぬだろうから、良い物をやろう」
そう言って、僕らに紙でできた人型のようなものをくれた。
「これは、1度だけ身代わりになってくれる、ありがたーいもんだ。自分で破ったりすんなよ。破ったら無効になるからな。あと、落とすなよ?」
「分かった…」
「じゃ、けんとーを祈る」
全然祈ってない声でそう言って、教室から出て行こうとした。
「ちょ、ちょっと待って!」
「なんだよ?」
「グラウンドに着く前に華子さんに追いかけられる危険はある?」
僕は不安になっていたことを確認した。
「いや。それは大丈夫だろう。グラウンドが出現したってことは、グラウンドが舞台だ。そこのエリアだけで鬼ごっこをするってルールになったんだろう」
「なんか、華子さんちょっとズルイな。自分が有利な条件に変更して、そのとおりにしなくちゃいけないなんて…」
佐野さんが口を尖らせて言った。
「気持ちは分からんでもないが、それがここの理だからな」
また出た。理。なんだよ理って。
そんな声が聞こえたように、カンナギ君は僕をちらっと見て
「ここは俺らのいる世界じゃない。華子さんの世界だ。彼女の思うように動くのはしゃーないだろ?そこに自ら望んでお邪魔したのはお前らだ」
もっともなことを言われて僕らはまた、黙ってしまった。
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