第8話 かくれんぼ鬼ごっこ⑥

「みぃぃ~つけたぁぁぁあ」


そう言った華子さんが僕らに向かって歩いてきた。

いや、歩いてるんだけどめちゃくちゃ早い!走ってないのに、走ってるみたいに速い!!!!


「か、かんなぎくん!!」


焦ってカンナギ君の名前を呼ぶ。


「うるせぇな。叫ばなくても聞こえるっつーの」


ねぇ!なんで通常運転なの?!やっぱり心臓がオリハルコンでできてるの?


「お前、なんか失礼なこと考えたろ?」

僕は慌てて首を横に大きく振る。


「まぁ、いいや。まずは、あいつが先」


カンナギ君が腕を振りかぶって、至近距離まで来ていた華子さんに何かを投げた。


「がぁぁ!!!!」

恐ろしい声を上げて華子さんが悶絶している。


「な、なに?何が起きたの??」


「とにかく、撤収!この場から逃げんぞ!おい!そこの女子!こっちこい!」


カンナギ君の呼びかけに弾かれるように佐野さんがこっちに走ってきた。

さ、佐野さん!いくらショートカットでも机の上を走ってくる?!


「よっしゃ。頭いいじゃん。こっから出るぞ!」

佐野さんが僕らの所に着くなり、そう言って職員室の外に向かった。

慌てて僕らも後を追う。


廊下に走り出て、皆が待ってる所へ走る。後ろからは怒り狂ったようにハサミを鳴らしながら華子さんが追いかけてくる。


「怖がるな。

まぁ、そういっても無理だろうが。あいつらは、人間の恐怖をエネルギーに変えて存在している。怖がれば怖がるほど、あいつらは強くなる」


「な、なんだか分かんないけど、むりぃぃいいいいい!!!」

僕は叫びながら、皆がいる所へ必死になって走った。


皆と無事合流して教室に逃げ込んだはいいけど、華子さんが追いかけてきてるのは変わらない。


「カ、カンナギ君どうするの?」


「うーん…そうだなぁ。かくれんぼ鬼ごっこってどうやって終わるんだっけ?」


「確か、鬼が全員を見つけると終わりだよね?」


「見つからない場合は?」


「えぇーっと…最初に時間を決めてなかったら、なんとなく終わる…かな?

休み時間なら予鈴が鳴るまで。放課後なら帰る時間まで、ってな感じかな」


「そこだよ。華子さんはかくれた子を全員見つけたわけじゃない。そして、制限時間も不明だ。」


カンナギ君がそれに答える。


「暗くなれば、なんとなく解散っていう終わり方してたからなぁ…」

野上くんが回想しつつ呟いた。


ふと、カンナギ君が窓を見た。


「グラウンドができてるな」


「え?!」

慌てて外を見ると、そこにはグラウンドができていた。


「え…なんで?」

野上君が外の景色を見て呆然として言った。


「なんだよ?グラウンドがどうしたんだよ?」

田中君が困惑気味に尋ねた。


「さっきまで、外は何もない暗闇だけが広がってたんだ」


「え?どういうこと?」


「つまり、ルールが変更になったんだ。かくれんぼ鬼ごっこから、鬼ごっこにな」

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