第7話 かくれんぼ鬼ごっこ⑤

順調に合流していた僕らは緊張感がほぐれて、気を抜いていた。

1階に着く、その時


シャキンッ!


暗闇の中でハサミの音がした。

「「「「!!!!!!!」」」」

僕らは硬直した。ただ1人、カンナギ君を除いて。

「おい、お前ら。軽はずみな行動取るんじゃねーぞ?分かったか?とにかく集団から離れるな。バラバラになったら探す手間で戻るのに時間がかかる」

カンナギ君が声をひそめて皆に言った。

僕たちは声を出さずに、力強く頷いて返事をした。


コツ、コツ、コツ―


華子さんの靴音がする。歩きながら時々ハサミを鳴らす。

「あーやって恐怖値を上げて墓穴を掘るのを待ってんだよ」

またもカンナギ君が言った。


―い…かい?


華子さんの方から声が聞こえてくる。

なんて言ってるんだ?


もーいーかい?


隠れてる人に呼びかけてるんだ!


まぁーだだよ…クスクスクス


いや違う。自分で問いかけて自分で答えてるんだ。

笑ってる。怖い。


もーいーかい?

もう、いいよねぇ?


突然、声が変わって華子さんが一方的に断定した。

その瞬間、ガスッ!!と物凄い音がした。思わず悲鳴を上げそうになった僕らは必死で口を押えて飲み込む。

と、同時に職員室の中からガンッ!という音が聞こえた。


「ちっ!」

カンナギ君が鋭く舌打ちをした。

「やばいな。残りの奴が中にいるってバレちまった」

「…」

華子さんは職員室の扉の前でじっとして動かない。

「?」

いい加減、僕らがしびれを切らした時、職員室の扉を華子さんがゆっくりと開けた。ガラガラガラ…


「いやーーーーー!!!!!!!」


パニックになって叫ぶ佐野さんの悲鳴が聞こえた。

「ばかが!お前らはそこにいろ!」

カンナギ君が言って、職員室へ走っていった。

走る背中を見た僕は思わず反射的に後を追いかけていた。

「嵐山くん?!」

後ろで驚いて僕を呼ぶ声がする。

走りながら、なんで僕は彼の後を追いかけてるんだろう?と妙に冷静に考えていた。どう考えても足手まといなのに。

「は?お前なんで着いて来てんだよ?」

「な、なんでだろうねぇ?あはは・・はは」

「馬鹿野郎!足手まといなんだよ!」

う…やっぱり、そうだよね。戻ろうかな?と思った時には職員室の中に入っていた。職員室の真ん中で、机を挟んで対峙している佐野さんと華子さんがいた。

「あ…嵐山くん!!!助けて!」

僕に気づいた佐野さんが叫ぶ。

グリン!と首だけを回転させた華子さんがこっちを見た。

「ひっ!」

華子さんは僕らを見ると、にぃぃ…と笑ったんだ。

どうでもいいけど、首、曲がりすぎだよ!ホラーだよ!!!

存在自体がホラーだけど!


「みぃぃ~つけたぁぁぁあ」


ジャキン!嬉しそうにハサミを鳴らしながら、華子さんがにやぁっと笑って言った。

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