第6話 かくれんぼ鬼ごっこ④
今いるここは2階だったから、理科室に向かうことにした。
旧校舎にクラスはないけど、理科室とか音楽室、そういった部屋は稼働していたから、僕らも場所は分かる。
「ここだ」
慎重に扉を開けて、中に滑り込んだ。
「誰か、いる?」
声をひそめて呼びかけた。
シーンとしたまま、誰も呼びかけに答えない。
「ねぇ…本当に理科室にいるの?」
「間違いないな。怖くて隠れてんだろ。
―オイ!」
カンナギ君が急に大きな声を出すから僕らはびっくりして飛び上がってしまった。
人間て驚くと本当に飛び上がるんだね。
ガシャン!
同じタイミングで部屋の中で音がした。
「そこか」
カンナギ君がずかずかと音がした方向へ歩いていく。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
その後を慌てて追いかける。
「オイ。いるならいるって返事しろよ」
そう言って、カンナギ君が机の下をのぞき込んだ。
「ひぃぃ!」
そう悲鳴を上げたのは、野上君だった。
「野上君!僕だよ!ケンタだよ!落ち着いて!」
慌てて呼びかけた。
「ケンタ…くん?」
そう言って野上君が僕を見た。
「うん。みんなを探しに来たんだ」
「無事だったんだね!皆バラバラになっちゃったし、なんかもう、何が何だか分からなくて。ハサミの音が時々廊下から聞こえるし。
何度1階に降りて外に出ようと思っても、戻ってきちゃうし…窓の外みた?」
「え?そういえば見てないや」
窓の外を見ると、そこには真っ暗な暗闇が広がっていた。
普通なら、街明かりが見えるはず。校庭の外灯だってある。こんなに真っ暗だなんてあり得ない。
「まっくらだね…」
吉川さんが呟いた。
「そうなんだ。外に逃げ出そうと思っても、どう見ても僕の知ってる学校じゃないんだ。だから怖くて外にも出れない」
「それで正解だ。外なんて亜空間だからな。出てみろ。二度と戻ってこれないぞ」
カンナギ君がそう言った。
「ところで…その人、誰?」
野上君がカンナギ君を指さして尋ねた。
「おめーらは揃いもそろって礼儀がなってねーな。人に指をさすんじゃねーよ」
「えぇっと、カンナギ君って言うんだ。とにかく説明はあと!時間がないんだ」
「あ、うん。そうだね」
「次は3階の音楽室かな」
カンナギ君が言った。
「音楽室?なんで?」
野上君が聞いてきたから、さっきカンナギ君が教えてくれたことを伝えた。
「えぇぇ…非常識すぎるよ。そんなんで大丈夫なの?」
「しっ!確かに非常識だけど、実際に野上君がいる理科室だって、カンナギ君が教えてくれたんだよ?」
「そ、そっか…そうだね。今、この状況が非常識だもんな。うん。彼の行動と見た目が非常識でもおかしくないんだよな」
「おめーら聞こえてっからな!」
カンナギ君に一喝された。
3階の音楽室の前に着いた。
ここまで順調で華子さんには出くわしていない。ハサミの音も聞こえない。
「開けるよ?」
そっと扉を開けて部屋の中に滑り込んだ。
「誰か…いる?」
また、部屋の中にいるであろう誰かに呼びかける。
「あゆちゃん?田中君?いる??」
吉川さんも呼びかけた。
ズッ…と重たいものが動く音がした。
「吉川?」
田中君が教卓の下から出てきた。教卓の前に棚を置いてバリケードにしてたみたいだった。
「嵐山!野上も!!」
田中君の顔が輝いた。
「佐野は?」
「佐野さんは、1階の職員室で隠れてるみたいなんだ。迎えに行こう」
僕が代表して田中君に言った。
「俺がここにいるって、よく分かったなー。てか、そいつ誰?」
カンナギ君に気づいた田中君がそう言った。
「カンナギ君っていうんだ。説明はあとね!時間ないからさ。佐野さん迎えに行こうよ!」
「う、うん。そうだな」
ものすっごい不審な目をカンナギ君に向けながら田中君が言った。
そんな目を向けられたカンナギ君は涼しい顔して佇んでいる。
やっぱり、心臓がオリハルコンでできていると思う。
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