第3話 かくれんぼ鬼ごっこ

僕らが振り向くと、階段の上に髪の長い女の人が立っていた。

それだけでも怖いのに、足がすくんでしまった理由はその女の人の両手にあるもののせいだった。

「は・・さみ?」

その人の両手には大きなハサミが握られていたんだ!

「え?華子さん??」

誰かがそう呟いた。


シャキン

シャキン


その人は、僕らをからかうようにハサミを鳴らした。

「ひっ・・ひぃぃ!」

野上君が悲鳴を上げた。その声で我に返った僕らはいっせいに逃げ出した。

必死で階段を駆け下りる。1階に着いた!と思うと、また階段が続いている。

「なんで?なんで1階に着かないのよぉ!」

佐野さんが泣きながら叫んだ。

僕も泣きたかったけど、それよりも恐怖が勝っていて涙は出てこなかった。

「いたっ!!」

後ろで声が聞こえて振り向くと、吉川さんが転んでいた。

「待って!待ってよぉ!!」

吉川さんが泣きながらみんなに言った。

誰もがパニックになってて、僕以外に吉川さんが転んだことに気づいていない。

(どうしよう…どうしよう…)

少し悩んで、思い切って吉川さんの所へ戻った。

「大丈夫?立てる??」

「足首ひねっちゃったみたい…でも、なんとか走る!」

「うん。僕も一緒に走るから!」

かなりスピードは遅くなったけど、なんとか2人で走って階段を下りる。

吉川さんを見ると、おでこに汗をびっしょりかいて顔が真っ青だ。恐怖以外にも足がかなり痛いんだろう。


シャキ・・シャキン!


後ろを振り向くと女が近くに迫っていた。

前を向き直して、必死で走り続ける。

「廊下を曲がれ!」

どこかからか声が聞こえた。僕らは反射的にその声に従って角を曲がった。


シャキシャキシャキシャキシャキ!


ハサミを鳴らしながら女が階段を下りていく。

「はぁはぁはぁ…よし…かわさん、だ、だいじょ、うぶ?」

「な、なんとか…」

荒い息をついて僕らはやっと足を止めた。

「さ…っきの声、誰だろう?」

「さぁ?はぁはぁはぁ…」

僕らは、きょろきょろと周りを見渡して声の主を探す。

「お前ら、なにしてんの?」

すぐ近くの教室の扉が開いて男子がひょっこり顔を覗かせた。

「きゃ!」

吉川さんが驚いて声を上げる。

「し…白髪の男子!!」

そう言って、指をさした先には、髪の毛が真っ白な男子がいた。

「君、失礼だな。そうやって人を指さすもんじゃないし、言うに事を欠いて白髪って。まぁ、実際白髪だけどね」

彼はそう言いながら自分の髪の毛を指でつまんだ。

「ところで。こんな時間に旧校舎で何してんだ?おおかた華子さんに追いかけられてたんだろ?」

「ねぇ、さっき曲がれって言ってくれたの、君?」

僕がそう尋ねると

「あぁ。そうだよ。なんか校舎内の空気がおかしいから、視たらぐるぐるループしてる奴らがいるからさ」

「「るーぷ?」」

「そ。お前らおんなじ所ぐるぐる回ってんの。他のやつらもそう。まぁ、お前らは“こっち側”に戻ってこれたけどな」

「え?えーっと…ちょっと待って。色々頭が混乱してるんだけど。整理させてもらっていい?」

「好きにすれば」

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