第2話 旧校舎トイレ

「なぁ。旧校舎のトイレ行ってみねぇ?」


そう言いだしたのは田中君だった。

田中君は体も大きくて度胸があって、ちょっとした冒険をするのが好きだった。

だから、この案も「ちょっとドキドキする冒険」のつもりだったんだと思う。

鈴木さんが見たと言っても、皆がみんな信じてるわけじゃなかったから。


放課後、同じクラスの女子にも声をかけて旧校舎のトイレに向かった。

僕と、田中君、野上君、佐野さん、吉川さんの5人だ。

なんだかソワソワドキドキして、女子2人はキャーキャーはしゃぎながら4階のトイレに向かう。

「…?」

3階から4階へ向かう時、目の端に白い髪の毛が見えた気がした。

あれ?と思って確認すると、そこには誰もいなくて、ちょっとだけヒヤッとしたんだけど、見間違いかもしれないし、もういないし誰にも言わなかった。


「何番目だっけ」


トイレの前に着いて、入る前に個室の確認をする。

「確か、奥から2番目だったと思う」

「じゃあ、行くぞ?俺らも一緒に入るぜ?」

「うん。もちろん!」

ちょっぴり怖くてドキドキするけど、みんななんだかニヤニヤが止まらない。

何か起きたらいいな、でも怖いことは起きないで欲しいな・・・

そんな感じで個室の前に向かう。


「えぇーっと。どうしたらいいんだっけ」

「ノックを4回して『華子さん、遊びましょう。カンちゃんも一緒に遊びましょう』だよ」

「カンちゃん…?なんだそれ」

「知らない。カンちゃんも一緒にって言わないとダメらしいよ?」

「えぇー…なんだそれ。ま、いっか。やってみようぜ」


トントントントン

華子さん、遊びましょう。カンちゃんも一緒に遊びましょう---


しばらく待ってみたけどなにも起こらない。

「えー?やっぱり鈴木のやつ、ウソついたんじゃねぇ?」

何も起こらなくてガッカリしたような、ほっとしたような複雑な空気が流れた。

そのまま帰るのも癪で、トイレで話してたけど一向に何も起きないから、帰ることにした。


階段を下りて1階に向かっていた時だった


シャキン


なんか、鋭利な刃物の音がしたんだ。

「なんか、音しなかったか?」

田中君が言った。

「うん。なんか音したよね…ハサミみたいな…」

吉川さんの言葉でみんな、一気に色めきだった。

「した!ハサミの音がした!!」

外はもう薄暗くなってて、怖さにいっそう拍車がかかって、軽くパニックになった。

「と、とりあえず校舎の外に出よう!」

僕らは階段を駆け下りた。

「もうすぐ1階だよ!」

バタバタ、バタバタバタ

「あれ?」

「今、何階?」

もう1階についてもいいはずなのに、また踊り場にたどり着いたんだ。

「え?やだ。うそでしょう?!あれ!」

佐野さんが叫んで僕らの後ろを指さした。

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