神薙くんと僕
ちゅらろま
神薙くん
第1話 トイレの華子さん
僕の学校には七不思議がある。
一つ、旧校舎の4階の女子トイレに華子さんがいる
一つ、夜の校舎を生首が飛んでいる
一つ、雨の日の夕方、誰もいない音楽室からピアノを弾いている音が聞こえる
一つ、入れないはずの屋上から誰かがおいでおいでしている
一つ、誰もいなくなった校舎で渡り廊下を渡るとテケテケが走って追っかけてくる
一つ、夜の校庭の真ん中でボールをついている首のない男の子がいる(ボールは生首)
一つ、学校の怪談の七不思議全部を知ると、旧校舎にある大きい鏡の世界に連れていかれる。
そして、学校に白髪の男子がいて、そいつに見つかると大変な目にあう。
「ケンタ!宿題やったの?」
1階からお母さんの声が聞こえた。ついで、階段を上がってくる音が。
「やばっ!」
慌てて友達から借りた漫画を開いた教科書の下に隠した。
「ケンタ?」
ガチャッと扉が開いてお母さんが部屋に入ってきた。
「ノックくらいしてよ!」
「なぁに言ってるの。あんたが勉強するから1人部屋が欲しいって我がまま言って、ヨウコさんから部屋もらったんでしょう?ちゃーんと勉強してるか確認するの。ガサ入れしないと・・・ね?」
そう言いながら教科書を持ち上げた。
あぁぁ…僕の完璧な作戦が!
「まったく…。あんた全然宿題進んでないじゃないの。漫画を読むなとは言わない。でも宿題しない人はダーメ!」
そう言って漫画を取り上げられてしまった。
「それ、野上くんに借りた漫画なの!返して!!」
「なら宿題なさい。それまでボッシュート!」
「お母さんそれ古い…」
「うるさいな!ちゃっちゃと宿題すませてご飯食べちゃいなさい!ハンバーグなくなるよー」
「えっ?!夕飯ハンバーグなの?」
「そうよー。そろそろメグルも帰って来ちゃうわよ。部活で腹を空かせまくったメグルがな!」
やばい…。
「ハンバーグのなかに…」
「もちろん、チーズ入り!」
やばい!
中学生になってからのメグルの食欲は化け物だ。
僕の大好きなハンバーグを全部食べられちゃうかもしれない!
「漫画よりハンバーグ」
焦って史上最速で宿題を終わらせて食卓に滑り込んだ僕を見てお母さんが呆れたように言った。
「だって、食欲の塊と化した化け物のメグルに全部食べられちゃうもん!」
「お姉様と言わんか!」
メグルに頭をはたかれた。
「そのセリフは、お姉様って言いたくなるような上品さを身につけてから言ってよ」
「かーわいくなーい!」
「可愛くなくて結構だよ!」
「あんた達、少しは大人しく食べられないの?」
「「だってー!!」」
「うふふふ」
ご飯を食べていたヨーコさんがおかしそうに笑った。
「二人とも仲良しねぇ」
「「仲良しじゃない!!」」
「あんた達は似た者同士で仲良しよ」
お母さんが呆れた声で言った。
「子供が元気なのは見てて楽しくなるわね」
おっとりとヨーコさんが言った。
ヨーコさんは、お父さんのお母さん。
つまり、僕のお婆ちゃんだ。
だけど、なぜか家族みんな名前で呼ぶ。
ヨーコさんはおっとりしてて、いつもニコニコ笑ってて一緒にいるとほんわかするんだ。
前は僕の部屋がヨーコさんの部屋だったんだけど、
1人部屋が欲しくてお母さんにお願いしてたら、話を聞いていたヨーコさんが譲ってくれる事になった。
ヨーコさんは「もう年だから2階より1階の方がいいのよ」って言って、1階に移動した。
元々は仏間だった部屋を改装してヨーコさんの部屋にしたんだ。
陽当たりが良くて快適よ、と笑って言ってくれた。
僕はそんなヨーコさんが大好きなんだ!
「おはよー」
「あ。おはよー。野上くんごめん。漫画まだ読めてないんだ」
「いいよいいよ。ゆっくり読んで~」
「ありがとう!」
「そういえばさー、聞いた?鈴木がさー、華子さん見たって!」
「え?本当?!」
「うん。肝試ししたんだって。
でさ…華子さん、噂どおりでっけぇハサミを持った大人の女だったらしいよ」
「え?!あれ本当だったの?!」
うちの学校のトイレの華子さんは、大人と噂されてたんだ。
よく聞くトイレの花子さんは子供で、いじめられっ子の花子さんが夏休み前に
トイレに閉じ込められて誰にも気づかれずに餓死して死んでしまったとかだと思うんだけど、うちは大人って噂されてた。
そして、普通は「花子」なんだけど、うちは「華子」
なんで、大人の女の人が小学校のトイレで華子さんになったのかは謎。
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