仕事するとこじゃないよ



「では次のお便りに参りましょう」

「はいはーい」

「ラヂオネーム『肉体改造レジェンディア』さんから」

「ありがとうございます!」

「『桔梗さん、得体さん、こんばんワイルドギース』」

「こんばんワイルドギース!」

「『私は筋トレが趣味です。友達にそのことを話すと、女の子なのに変わってるね、と言われます。私はただ男の子をねじ伏せられるだけの力が欲しいだけなのですが……』」

「ンフッ!(喉が痙攣するタイプの笑い)」

「『お二人は筋トレをしている女子についてどう思いますか? 良ければおすすめのプロテインを教えてもらえると嬉しいです』とのことです」

「意識が高くてすき! 五千万ポインツ!」

「また謎の得点を……」

「男子をねじ伏せたいときあるよねー、わかるよ!」

「あら、得体さんでもそういうことあるんですか?」

「そりゃあね。小学校の頃なんかはドッヂボールで男子相手に大活躍したもん」

「そういえば居ましたね、クラスに一人はドッヂでやたら強い女子が」

「今でも強い自信あるよ! また今度みんなでスポッチャ行こう!」

「はいはい」

「桔梗ちゃんのほうはその辺の闘争心なさそうだよね。腕もめっちゃ細いし」

「まあ、兄が二人いましたし。力で勝てないって早い段階から諦めていた気がします」

「育ちが良いもんね、桔梗ちゃん」

「自分ではよくわかりませんけど」

「ベランダでカイワレ大根とか栽培してそう」

「それ何か勘違いしてません?」

「肉を食おうよ桔梗ちゃん。そして一緒に筋トレをしよう」

「得体さんは筋トレしてるんでしたっけ」

「ドラム叩いてると腕がつったりするから、その防止にね」

「ちょっと袖まくってみてくれません? 力こぶができるか見てみましょう」

「まかせろー!(布の擦れる音)」

「…………」

「…………」

「…………思ったより微妙ですね」

「そりゃあないよ桔梗ちゃん」

「これでは男子をねじ伏せるのは夢のまた夢ですよ。どうするんですか」

「どうするって」

「貴女が道を示さないでどうするんですかって言っているんです」

「なんでちょっとキレ気味なの」

「リスナーさんの期待に応えられない得体さんなんて嫌いです」


(観客が溜め息をつくSE)


「こら! スタッフさんここ仕事するとこじゃないよ!」

「いいえ、これがこの場におけるマジョリティです。みんな得体さんが筋肉で男をねじ伏せることを待ち望んでいるのです」

「そんなことってある!?」

「ちなみに私は筋トレする女子には理解を示します。肉体改造レジェンディアさんが変わってるなんてことはないですよ。ここにいる得体さんがそれを証明してくれます……私は基礎的な筋肉量が足りないので無理ですが」

「うわ自分だけずっこい!」

「というわけで次回からは得体さんの筋トレ企画が始まりますよ」

「えっ待って嘘でしょ」

「おすすめのプロテインの準備をしておいてください」

「やだああああああ!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る