ぶち込みたいと思っています



(CM明け)



「そういえば番組紹介がまだでしたね」

「カンペ無視だったもんね桔梗ちゃん」

「えー、この番組『ロッキン・オン・ストロベリー』は邦楽ロックの最新情報をお届けしつつ、トレンドを牽引する若きロックンローラーの忌憚ないトークをお楽しみいただくことが主旨となっております」

「今回は噛まずに言えたね桔梗ちゃん」

「前回まで台本自体がありませんでしたし」

「これで収録は四回目だっけ? ちょっと遅すぎるよね」

「プロデューサーが見てるのでそこまでにしておきましょう得体さん」

「はーい」

「さて、それでは最初のコーナーに参りましょうか。せーのっ」

「「フツオター!」」

「本日も番組宛てにメッセージが届いております。ラヂオネーム『フィッシュアンドチップス総本家』さんから」

「ありがとうございまーす」

「『桔梗さん、得体さん、こんばんは』」

「こんばんわー!」

「『なんとなくラヂオをつけたら衝撃的な番組に出遭ってしまい、次の瞬間にはメッセージを送ってしまっていました。すごく面白いのでこれから毎回聞こうと思います』」

「キャー! ありがとう! だいすき!」

「『ところで質問なのですが、お二人は普段何をされているかたなんでしょうか? 教えてもらえると幸いです』」

「…………?」

「以上です」

「……………………?」

「ラヂオで伝わらない表現を使うのをやめてもらえますか」

「いまわたしはめいっぱい両腕を振って遺憾の念を表明しています」

「とはいえ当然じゃないですか? 私たち、この番組がメディア初露出なんですから」

「でもだいすきって言ったじゃん!」

「それは得体さんが勝手に言ったんですよ。鳥頭ですか」

「なんかよくわかんないけど悪口言われた気がする!」

「これで二十六歳……」

「けど自己紹介って毎回初めにやってるよね? Jam Bodyの桔梗と得体って」

「そもそもJam Bodyが何なのか伝わってないのでは」

「バンド名ですバンド名! バンプで言うところのバンプみたいな!」

「正しくはバンプじゃないですけどね」

「わたしたちはJam Bodyっていうロックバンドで活動してて、メンバーは他に二人います! ギタヴォとベース!」

「人格的にかなり問題あるんですけど、得体さんでも何とかなっているのでそのうちゲストで呼んでもよさそうですね」

「さらっとバンドメンバー全員を敵に回したね桔梗ちゃん」

「そういうわけで私たちは普段バンド活動をしています。この番組のパーソナリティーをしているのは、そうですね、アルバイトだと思っていただければ」

「アルバイトだったのこれ!?」

「日銭を稼ぐための苦肉の策ですよ」

「まじかあ……」

「隙あらばライブの宣伝もぶち込みたいと思っています」

「むしろそっちを重視すべきだよね、わたしたちって」

「まあ適当に喋ってるだけでお金貰えるんだからボロい仕事ですよ。ははは」

「プロデューサーが見てるよ桔梗ちゃん」



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