ガールズバンドの中身スカスカトークを延々と聞かされるラヂオ

吉野諦一

オープニングトーク




(シンセ音声によるタイトルコール)

(オルタナティブ・ロック調のイントロが流れる)

(ヴォーカルが入ったところでBGMフェードアウト)



「リスナーの皆さんこんばんは」

「こんばんわー!」

「ロッキン・オン・ストロベリー、今夜のパーソナリティーはJam Bodyの桔梗と」

「同じくJam Bodyの得体とでお送りしまーす」

「よろしくお願いします」

「桔梗ちゃん桔梗ちゃん」

「なんですか得体さん」

「最近わたし、オムライスにはまってるの!」

「漫才の出だしみたいな話の振りですね」

「オープニングトークってそういうものじゃないの?」

「それにしたって挑戦的だと思いますけど」

「まだこの番組始まったばかりだし、何事も経験でしょ」

「まあ我々ほとんど素人ですし、やってみましょう」

「うん!」

「それでオムライスが好きとは何事でしょうか」

「桔梗ちゃんオムライス嫌いだっけ?」

「好きですけど得体さんが好きなら嫌いになるかもです」

「奪い合いになる前に一歩退く優しさ。平和主義だね桔梗ちゃん!」

「まさかポジティブに捉えられるとは」

「でね、わたしの実家ってオムライスが出てきたことないの」

「急に可哀想なエピソードになりましたね」

「いやいやそうじゃないの。世間で言うオムライスっていうのが、わたしの実家では違う名前だったんだよ」

「へえ、なんて名前だったんですか?」

「ケチャップライス」

「やっぱり可哀想なエピソードじゃないですか」

「正式名称はケチャップライスオンエッグ」

「見た目的にはほぼケチャップライスになると思うんですが」

「ひっくり返せばオムライスになるよ!」

「そういう問題じゃないです」

「で、この前初めて洋食屋さんでオムライスを食べたの」

「良かったですね……長年の夢が叶って……」

「そんなこと一言もいってないけど?」

「ああすみません、あまりに涙ぐましくて」

「もー大げさだなー、わたしんちはちょこっとケチなだけだよ」

「子に心配をかけさせない親御さんの苦労が偲ばれます……」

「桔梗ちゃんうちの親に会ったことないでしょ」

「それで、人生初のオムライスは美味しかったですか?」

「うん! なんかね、卵がふわっとしてて、厚かった!」

「貴女今年で幾つになるんでしたっけ」

「えーとね、にじゅうろく!」

「これで私よりも年上……」

「何がびっくりしたかって言うとね、店員さんがお皿を持ってきたときにぷるぷるの卵が乗ってたことだよね。そこにナイフをスッと入れると、中からとろとろの半熟卵が……」

「え、得体さん、それはまさか」

「んふっふ、気づいたね桔梗ちゃん。これが本当の――」

「「オープニングトーク!」」


(観客が湧き上がるSE)


「……それでは皆さん、今夜も朝までお付き合いください」

「終始このクオリティでお送りするからよろしくぅ!」

「控えめに言って地獄」


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