『大海獣ハシラー』 中編その7


 ハシラーは、もう、止まらなかった。


 食い始めたら、おなかいっぱいになるまで、止まらない。


 それが、ハシラーである。


 ハシラーは、ついに、あの、二本の七色に輝く、長い棒を使い始めた。


 それは、まさしく、お箸だったのである。


 おさかなだけではない。


 人間だって、食べてしまう。


 ハシラーは、丘の上に陣取り、攻撃してくる人間たちに、目をつけた。


 目にも止まらぬ早業で、次々につまみ上げ、食べてしまうのだ。


 『間に合わなかったか。』


 兄は叫んだ。


 『って、あんた、わかってたのか!』


 弟が呆れて、尋ねた。


 『そうさ。これこそ、政府の一部門が開発した、新兵器さ。相手を、骨までぜんぶ食べちゃうんだから、あとかたずけもいらない。最高のグルメなんだ。』


 『あんたが、作った?』


 『まね。怒らせなければ、こうはならないんだ。』


 『政府って、どこまで、知ってるの?』


 『ごく一部さ。みんな、失脚するか、死んだかでね。現政権で知ってるやつは、まあ、ひとり、かな。言わないだろう。こうなったら、責任あるからな。廃棄したはずだから、まさか、ここで、出てくるなんっ、かんがえとらん。』


 『なんという。あんたが、廃棄したのか?』 


 『おれなら、絶対、完璧にやる。先に辞めたんだ。いい加減に、処分したつもりなんだろうが、ハシラーは、簡単には死なない。いや、まず、殺せないよ。』


 『くそ。あにき、まっど・さいえんてすとか。』


 『ちょっと、違うがな。』



   ・・・・・・・・・・・



 『おーい、ふく、じゃんじゃん、出来てきとるよ。どするよ。』


 『あ、大将。サンキュー。船出すぞ。積み込め❗』


 『ふくさし』はじめ、大量の料理が、船に積み上げられた。



       ・・・・・・・・・



             つづく


   


 


 

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