第121話 腹痛の妊婦のベトナム人妻が病院から帰ってきた

 ベトナム人妻のトゥイのLINEメールには、


 病院の医師が診てくれた時、「何食べたんですか?」と聞かれて「揚げ物を食べました」と答えたら、「妊娠中なのに揚げ物食べたらダメだよ」と言われたこと。特に屋台などのお店では、古い油を使っている場合もあるので妊娠中は揚げ物を食べるのは控えた方がいいこと。


 医師は廊下においた「移動式のベッドで休んで待っててください」と言い、どこかへ行ってしまったと嘆きの内容が書かれていた。


 てっきり医師に診察してもらい、適切な処置をしてもらっているのかなと日本人夫の私は勝手に思ったのだけれど、ここはベトナム! 日本とは違うのだ。


 私はトゥイに「とりあえず休んで! 何かあったらすぐお医者さん呼ぶしかないよ」とLINEメールした。朝になり、トゥイとトゥイの母親と妹は帰ってきた。


私:おかえり! 大丈夫だった? お医者さんから薬とかもらったの?


トゥイ:薬もらってないよ。ずっと廊下にある移動式ベッドにいただけだよ。


私:え?


トゥイ:これじゃあ、家で休んでいるのと同じだよ。待ってたらお腹が痛くなって、妹に先生呼んできてと頼んで、妹が呼びに行ったけど先生はこない。何度も妹に呼びに行ってもらったけどこなかったよ。


私:あらまぁ!


トゥイ:朝になってやっと先生がきて、もう家に帰ってくださいと言われて終わり。


私:ずいぶんあっさりしてたね。で、お腹の赤ちゃんは大丈夫なの?


トゥイ:大丈夫だって!


 トゥイはお腹の赤ちゃんが無事だったので笑顔であった。私にしてもトゥイとお腹の赤ちゃんが何も悪いことが起きなくてよかったと安心した。


私:トゥイが帰ってくるまで心配で寝れなかったよ。何かさぁ、タムちゃんはベッドで平気で寝てるんだけど、壁見たらゴキブリが動き回ってるんだよ。怖かったね。


トゥイ:ゴキブリが怖くて寝れなかったんじゃないの?


私:そうかもね。あははは。


トゥイ:あははは。


 二人して笑いあった。今回は、何事もなかったから笑い話ですんだのだ。けれども、今後、また何があるか分からない。


 私がベトナムにきてからバイク移動する時、いつもトゥイが運転するバイクの後部座席に乗っていた。トゥイは妊娠中だがバイクの運転をしている。


 トゥイのお腹が大きくなるにつれて自分でバイクの運転をするのは控えないといけなくなるだろう。幸い、ベトナムは50cc以下のバイクであれば免許なしで運転することができるのだ。


私:何十年もバイクの運転してなかったけれど、練習して運転できるようにしておこうかな。


トゥイ:うん。わたしのお腹が大きくなって産婦人科に行かないと行けない時、あなたが運転しないといけないよ。


私:そうだね。運転できるようにする。


トゥイ:じゃあ、今度、バイクの運転練習できるところがあるから、そこに行ってみよう。


私:分かった。


 私はバイクの練習の約束をトゥイとした。

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