第122話 妊婦のベトナム人妻を守るためにバイクの運転練習を始めた
我が家からバイクで少し行ったところにバイクを練習する広場があった。日本の自動車教習所のバイク試験に使われるコースをこじんまりしたようなサイズにした広さだった。
私とベトナム人妻のトゥイとトゥイの母親と妹とタムちゃんらで2台のバイク移動でバイク練習場に着いた。
トゥイ:ここでバイクの免許欲しい人は運転の練習してるんだよ。
私:そうなんだ。誰もバイクの練習していないから貸切状態だね。
辺りは日が沈み薄暗くなっている。バイクの運転は約20年振りとなる。
高校2年生の時に原付免許を取得し、すぐに新聞配達のバイトを始めた。
雨の日も風の日も雪の日も新聞を配っていた。
新聞配達が終わって少し仮眠をして高校に通っていたのだ。
今度はバイクの後ろに新聞ではなく、トゥイとトゥイのお腹にいる我が子をのせる。
新聞配達のバイトをしていた頃、大雪に見舞われた。
台風だろうと大雪だろうと新聞配達を休むことはできない。
雪が積もり続ける中、新聞配達のバイクを停めたら、バイクが雪で滑って転倒した。
積んでいた新聞紙が無惨にも雪に落ちた。
私は泣きそうになった。
今度のバイク運転は、新聞ではなく大切な妻とまだ生まれてこない我が子を運ぶことになる。
絶対に事故を起こしてはいけないのだ。
スピードも出さない。
転倒もしない。
安全運転のことだけを考える。
私はそう思いながらバイク運転の練習をした。
トゥイの父親は、当時、バイク配達の仕事をしていたが、商品配達中に無茶な運転をするトラックに激突され亡くなった。
トゥイとトゥイの母親と妹は路頭に迷った。
ベトナムは日本と比べると車にしてもバイクにしても荒い運転をする人が多いと感じる。
なので、トゥイの運転するバイクの後ろに乗って移動していた時、何度もバイク事故を目撃した。
私は大切な命を守るため、バイクの練習に励んだ。
まぁ大丈夫でしょ? みたいな、なぁなぁな感じにはしなかった。
自分が納得するまでバイク練習をしたんだ。
こうして私は、約20数年ぶりにまたバイクの運転を始めた。
大切な命を守るために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます