第108話 ベトナム人妻の実家で飼っている犬が亡くなった

 ベトナム人妻のトゥイの実家でソウという名前の犬を飼っていたのだけれど、残念ながら亡くなってしまった。


 ベトナムでは泥棒対策として犬を飼っている家庭が多いとトゥイから教えてもらった。

※ベトナムではお化けを信じている人が多く、お化け対策に犬を飼う家庭もあるようだ。


 たしかにベンチェの実家では寝る時、盗まれないようにバイクを家の中に入れている。ホーチミンのアパートでは共同の扉には南京錠がかけられていて、扉を開けて各アパートの部屋に入る通路には入居している住民たちのバイクがズラリと並んでいる。


 日本のように路上にバイクをとめていたら、間違いなく盗まれてしまうだろう。ちなみに日本人夫の私も学生時代に新聞配達をしていたのだけれど、家の前にとめていたバイクのカブが盗まれてしまったことがある。


 カブはボロボロでトータル走行距離がゆうに地球一周はしていたので、まさか盗まれることはないだろうと油断していた。でも、日本でも盗む人はいるのである。


 新聞屋にカブが盗まれたことを報告したのだけれど、特に私が自腹でカブを弁償することはなく、別のカブを貸してもらった。


 話を元に戻すと、トゥイの実家で飼っていた犬のソウが亡くなり、トゥイの家族たちはとても悲しんだ。生き物を飼うということは、いつか悲しい別れが待っていること。そのことを知った上で、生き物を飼わないといけない。


 トゥイの実家では犬が1匹もいなくなり、防犯面で心細くなってしまったのでトゥイの親戚が知り合いから1歳の犬をもらってきた。


 トゥイ家には新しい家族が仲間入りした。犬の名前はトゥイの妹がつけた。名前は「がうがう」である。がうがうはとてもおとなしい犬で、身体を洗ってもらっても嫌がらない。されるがままである。


 身体をきれいにあらってもらって、もう着なくなったシャツをタオル代わりにしてふいたのだけれど、シャツの青の色が犬の毛に着色してしまうハプニングが起きた。


 4歳のタムちゃんに関しては、がうがうをピンク色に染めようと言っているぐらいである。

※タムちゃんはピンク色が大好き。 私は4歳の子供の発想って自由だなと感じた。


 タムちゃんのがうがうをピンク色に染める案は、永久的に採用されることはないだろう。私にしても、生き物を飼う経験は今までの人生でたくさんあったし、それに伴い、数々の悲しい別れを経験してきた。


 もう亡くなってしまった犬のソウは、私が初めてトゥイの実家に訪れた時、ワンワンと私に対して吠えまくった。何度もトゥイの実家に私が訪れることで、しだいにソウは私を見るとしっぽをふってくれるようになったけ。


 ようやく私とソウの友情が始まろうとしていた矢先、ソウは天国へ行ってしまった。出会いもあれば別れもある。出会いは喜びを運んでくれる。別れは悲しみを運んでくる。ソウとの想い出は忘れないよ。きっと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る