第109話 ベトナムで盗難にあいました! 意外なものが盗まれた件
ホーチミンのアパートでベトナム人妻のトゥイが花瓶を家の外においていたのだが、しばらくして花瓶が盗まれてしまった。これが日本人夫の私が目の当たりにした最初の盗難事件である。
トゥイは花瓶がなくなったことにかなりキレていて、すぐに大家さんに連絡した。
「誰が盗んだか監視カメラで探して欲しい」と訴えた。
ちなみにホーチミンのアパートには監視カメラが取り付けられているので、何か悪いことをしたらバッチリカメラに記録として残る可能性が高い。
トゥイからベトナムは泥棒がいると聞いていたので花瓶が盗まれてもさほど驚きはなかった。けれども、それからしばらくして予想外のものが盗まれ私は驚くはめになった。
あれは私とトゥイがホーチミンのラッキープラザというデパートに買い物に行った時のことだ。地下駐車場にバイクをとめ、お揃いのヘルメットをバイクの前列にあるひっかけるところにかけてデパートの店内に入った。
デパートの一番上の階から順番に見て回り、地下の食品売場で買い物をすませた。駐輪場に行くとないのである。
トゥイ:あれ? ヘルメットがひとつしかない。あなたのヘルメットは?
私:知らないよ。トゥイがヘルメット2つかけたでしょ?
トゥイ:ないよ。
私:盗まれたからないんじゃない?
トゥイ:ヘルメット盗られた!
どうやら私のヘルメットが何者かに盗まれたらしい。まさかヘルメットが盗まれることになるとは思いもしなかった。日本人の感覚からしたら、どこの誰がつけたか分からないヘルメットを盗るなんて考えられないことである。
けれども、ここはベトナム! 不足の事態が起きてもしかたがない。トゥイはヘルメットがないと騒ぎ、駐輪場の受付に行ったのだけれど「自己責任だからデパートは保証しない」と言われてしまった。
盗まれたヘルメットはトゥイが働いたお金で私のために購入したプレゼントでもあった。値段は日本円で750円でベトナムでは高級な部類に入るみたいである。
トゥイは悲しそうな表情で私を見ている。そんな姿を見かねたデパートの清掃員のおばさんが近づいてきて、「クッションがないヘルメットだけど、これならあげるよ」と言って中古ヘルメットを渡してきた。私とトゥイは清掃員のおばさんに感謝した。
日本でもそうだけれど、悪い人もいれば良い人もいる。ベトナムでは困っている時に助けてくれる人がいることを私は身をもって体験することができた。
ヘルメットはクッションがないので、ヘルメットの機能としては使えないだろう。けれども優しさを伝えるには十分の出来事であった。ラッキープラザをバイクで出た後、すぐに路上でヘルメットを売っている露店があった。
トゥイは私に「日本語絶対話さないでね。ヘルメットの値段高くなるからだまってて」と言うと、ヘルメットを売っている人にあれこれヘルメットの値段を聞いていた。
ヘルメットのサイズはやや大きめであったが、250円の格安ヘルメットを購入した。以降、防犯対策でチェーンロックを購入し、ヘルメットの紐にチェーンロックを通して、バイクにつけて盗られないようにしている。
ちなみにベトナムでヘルメットが盗まれることはよくあるそうだ。自分だけは大丈夫だろうと思っていても大丈夫じゃない時がある。
しかもトゥイが私のためにプレゼントしてくれた記念のヘルメットが盗られたのはとても残念であり悲しい。ベトナムでは常日頃、防犯意識を持つことが大事だと今回の盗難事件で思い知らされたのであった。
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