第95話 ベトナムのバイクタクシーから転身! とあるサクセスストーリー

 ベトナムにはバイクタクシー運転手がいて、気軽に乗ることができる。日本人男性の私は試したことがないが、専用のアプリで簡単にバイクタクシーを呼ぶことができるみたいである。


 一方、ベトナム人女性のトゥイの話では、バイクタクシーの仕事はベトナムの中でも低賃金に入るらしい。以前、トゥイの叔父(30代後半)はバイクタクシーの運転手をしていた。


 しかし、結婚を期にバイクタクシーの給料では生活が厳しいと心配したトゥイのおばぁさんは違う仕事をした方がいいと提案した。


 ちなみにトゥイの叔父は片方しか目が見えない。若かれし頃、事故で片方の目の視力が奪われたそうである。


 トゥイの叔父はバイクタクシーの仕事を辞め、どこかに就職して働くのではなく、配達の仕事を自ら立ち上げ働き始めた。事業はうまくいっているみたいである。


 唯一、トゥイの叔父の家族の寝室にはクーラーがあるし、家で飲み会をしないかと誘われた時、1ケースのビールを用意し、気前よくビールをふるまってくれた。私は家での飲み会でただ酒を飲んでいたのである。


 気前のいいトゥイの叔父の姿を見た私はトゥイに「彼は何の仕事しているの?」と質問した際、今回のバイクタクシーから転身し、自営の配達業をしていることを教えてくれたのである。ちなみにトゥイの叔父の奥さんは専業主婦をしている。


 また、この話を聞いた時、トゥイのおばぁさんは今が良ければいいのではなく、未来のことをしっかり考えることのできる女性なのだと感じた。そう言えば私がベトナムのホーチミンへ到着後、次の日にはトゥイのおばぁさんの住むベンチェに行くことになった。今にして思えば、トゥイのおばぁさんは、私がどのような人物かいち早く見定めたかったのかもしれない。


 実はホーチミンでトゥイの妹は働いていたのだが、トゥイの母親とおばぁさんはホーチミンで働くことを反対していた。そして、最悪のことが起きてしまったのだ。妹の給料未払いである。


 来月には給料払うからと言われ続け、約束の期日になっても給料は支払われない状態が続いた。それなのに働かせようとするブラック企業であった。


 トゥイの妹は企業の寮から出ていきベンチェに戻ることにした。4歳のタムちゃんは母親がベンチェに戻ってきたのでとても喜んでいる。


 ベトナムは日本の高度成長期のように経済発展している。これから先、いろいろなベトナム人たちが、人生の大事な選択をし、ベトナムドリームを達成するだろう。今日もどこかでベトナムドリームを達成するベトナム人が誕生しているかもしれない。

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