第94話 家賃13000円のホーチミンのアパートの良いところ悪いところ

 ベトナムのホーチミンのビンタイン区にある住居のアパートは光熱費やインターネット代も含んで家賃13000円である。


 また、アパートの部屋には何人住んでもよく、何時までに家に帰らないとかの門限もない。ベトナム人女性のトゥイの話では、アパートによっては住んでいい人数が決められている。門限のあるアパートもあって門限の時間内にアパートに帰らないといけないところもある。


 アパートは防音設備がなく、隣の住人(複数で住んでる女子大生たち)や向かい側の住人(複数で住んでいる男性)の声は筒抜けである。


 深夜だろうと住んでいる住人が音楽を聴きたいなら、音量垂れ流しの状態で鳴り響く。話し声も鳴り響く。神経質な方が、このようなアパートに住んでしまった場合、ストレスでおかしくなってしまうかもしれない。しかもこのアパート一帯は全員ベトナム人の方たちしか住んでいないのである。


 唯一、日本人男性の私がぽつんといるだけ。そんな環境下でのホーチミンのアパート生活であるが、良いところもある。家賃が安いのは言うまでもないが、私とトゥイは日本語で話しているため、話し声が周りに筒抜けになってしまっても何を話しているか知られないのである。


 国際恋愛に夢を持たれている方には申し訳ない話になってしまうが、トゥイが鼻くそをほじっているのを目撃してしまった時があった。


私は「手を洗いなさい」と注意したが、一向にトゥイは洗う気配がない。


私:鼻くそほじったんだから洗いなさい!


トゥイ:やだよ 。


私:汚いでしょ?


トゥイ:やだやだ。


私:手を洗わないなら私も鼻くそほじってトゥイにつけるよ。


トゥイ:分かった。洗うよ。


 もしも隣近所に日本人が住んでいた場合、あの男と女は何つー会話してんだよ。かなりやばいよとツッコミが入ったことだろう。


 ちなみに家賃13000円のアパートのスペックだが、防音設備がないため、隣近所の声が聞こえる。


 シャワーはでるがお湯はでない。クーラーはない。洗濯機がないのでトゥイが手洗いで洗濯。バイクを自分たちのアパートの部屋のドア付近にとめているのだが、他の住民がそこにバイクを勝手にとめてくる。


 トゥイはまたかよという表情でバイクをどかして自分のバイクをとめると、とめた張本人が出てきて、何やらトゥイと言い争いになっていた。


 トゥイ曰く「他の住民は複数で住んでいて、バイクも複数とめている。でも、私たちはバイク一台だけ! ちゃんと大家さんに言って、ここはトゥイのバイクとめるところになってる! だから私は悪くない。悪いのはトゥイの場所にバイクとめた人だよ」と怒っていた。ベトナムの女性は強い。決して泣き寝入りしないんだなと私は思った。


 けれども、勝手にとめた相手側も強い。定期的にトゥイのバイク置き場にとめてくるのである。特にトゥイの実家であるベンチェで生活し、ホーチミンのアパートに戻った際、高確率で何者かのバイクがとめられている。


 私とトゥイは顔を見合わせ、またかよという表情になった。トゥイがたんたんとバイクをどかしていたのは言うまでもない。

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