12

***


披露宴も滞りなく終わり、二次会までの間時間が空いた。


未菜ちゃんは一度家に帰ると言って、早々に駅で別れた。

私は帰るには微妙な時間だし、かといってパーティードレスのままブラブラするのも何だか憚られる。どうしようかと迷ったあげく、二次会会場に併設されているカフェへと赴いた。そこで時間を潰そうと思ったのだ。


店の外にメニュー看板が出ていて、カフェのメニューがポップなイラスト付きで描かれている。

美味しそうなパンケーキもあって一瞬心惹かれたけれど、さっき披露宴で美味しい料理をお腹いっぱい食べたばかりだ。食いしん坊にもほどがある。自分の食欲に苦笑いだ。


「結衣ちゃん。」


突然名前を呼ばれ、私は小さく振り向いた。


「瞬くん!どうしたの?」


そこには先ほど式場で会った瞬くんが肩で息をしながら立っていて、私は目を丸くする。


「え、大丈夫?」


「はぁー、探してた。」


瞬くんは大きく息をしながら髪を掻き上げる。

すっごく走りましたという感じが否めない。


「探してたって、私を?」


「スマホ預かったままだから、焦ったよ。」


「ああっ!」


披露宴のサプライズで子供達の歌を動画で撮ってと自分のスマホを手渡してお願いしたのに、返してもらうのをすっかり忘れていた。


「ごめんなさい。私ったら頼んでおきながら忘れるなんて。」


本当にボケボケだ。

ボケボケすぎて恥ずかしくなってしまう。

それに、瞬くんをこんなに走らせてしまうなんて申し訳ない。


瞬くんはポケットからスマホを取り出すと、丁寧に私の手に乗せてくれた。


「ごめんね、ありがとう。」


「ねえ、よかったら一緒にお茶でもどう?」


瞬くんは目の前のカフェを指さして言う。

断る義理はまったくないので、二つ返事で頷いた。

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