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1週間後の土の日ーーー



遂に王国へ向かう日が来た。

緊張と不安で昨日の夜は全く眠れ……ない事も無かった。

爆睡だ。


魔力循環のコツを掴んでから楽しくて、大きなアレンをマッサージしまくっていたのだ。

おかげで直ぐに眠れてしまう。


緊張で胃はキリキリするが、こちらに来てから生活習慣が改善され過ぎているのでお肌はプルプルだ。

天然温泉凄い。



ゲイルと朝ご飯を食べ、暫くすると

エディとカレンがやって来た。




「よーっす!2人とも元気だったか!」


「エディ、朝から頭に響くんだけど。

迎えに来たわよ。

まず、アンバート家に向かいます。国王との謁見は午後からだから」



「おはようございます、お2人共。本日は宜しくお願いします」


「宜しく」


挨拶を終えて、皆で馬車でミレーヌの役所へ向かう。

馬車には初めて乗ったが、中々に臀部にくる。



役所に着くと、人の良さそうな中年男性が出て来て転移魔法陣の所まで案内してくれた。


そこは、小さな円形の小さな建物なっていて

中に入ると床の真ん中に大きな魔法陣が描かれていた。

寧ろ、それしか見当たらない。

魔法陣用の建物の様だ。


魔法陣はとても凝っていて、一日で描けるような代物では無い。

まして、丸暗記等は到底無理である。



「では、転移を始めます。魔法陣の上に乗って」


カレンが皆を促し、全員が魔法陣に乗ると

役所の中年男性が行ってらっしゃいませと言い、建物の壁に埋め込まれている水晶に触れる。


すると、魔法陣が光り輝き眩しさで目を瞑ると

もう別の場所だった。


移動の瞬間見逃した。


そこは同じような円形の建物だが、何処か豪奢で品が良い。


「ここが王都の転移魔法陣が有る所よ。外にうちの馬車を待たせて有るわ」


カレンが丁寧に教えてくれる。

だが、何処と無く嫌そうだ。

本当は私をアンバート家には連れて行きたくないのだろう。


外に出ると百合と剣の家紋が入ったとても立派な馬車が鎮座していた。

カレンとエディは躊躇無くそちらに乗り込み

私は何だかドキドキしながら乗り込もうとすると、ゲイルが手を出していた


「?」


その意味が分からず小首を傾げていると


「お手をどうぞ」


と、ゲイルが微笑んだので

理解した私は『忘れてたーーこの人貴族子息!!』と

格好良すぎる推しに心で暴言を吐きつつ

手汗を気にしながら、その手を取り乗り込んだ。


流石、侯爵家の馬車。

丁度良い硬さのシートで揺れが少ない。

臀部、痛くない。


と、意識を遠くに飛ばさないとやってられない。

只でさえ推しの実家に行くのだ

緊張しない訳が無い。

先程会心の一撃を食らったのでもう、ライフはゼロ状態。


20分も経たずにアンバート家の屋敷に到着した。

馬車で何かしら会話をした様な気がするが、覚えていない。


今日は転移して来た時に着ていた白のワンピースを着ている。

落ち人だという少しでも証明になるかと思った事、そしてこれが一番無難かと思ったのだが、屋敷を見てやはり躊躇してしまう。


あちらでも一般市民だったのだ。

貴族の知り合いも、大金持ちの知り合いもいない。


屋敷の門が開き、馬車ごと中に入り扉の前に止まった。


馬車から降りると、侍女や従僕がずらりと並んでいた。


降りる時も同じ事が起きましたよ。

身構えて居たので今度はダメージが少なかった。

少ないだけで、無い訳ではない。



「ゲイル、おかえりなさい」


皆に付いて歩いて行くとカレンと同じ亜麻色の長い髪を三つ編みにして横に流している穏やかそうな眼鏡の美女と、少しくすんだ緑色の髪と青色の瞳を持つ2人の青年がいた。


「師匠、お久しぶりです」


「もう!母上と呼んでって言ってるのに~!堅物なんだからっ」


「まぁまぁ、母上。今に始まった事では有りませんし」


「久しいな、ゲイル。息災か?」


「この様に元気です。エルフィング兄上、マグオット兄上」


「お母様、こちらが『落ち人』のマリーよ」


「貴女がマリーさんね。

初めまして、ファミーユ=アンバートよ。今日は貴女を待っていたの」


「あ、ありがとうございます。

マリーと申します、お招き頂き光栄です。

この様な格好で申し訳ございません。こちらの礼儀等も良く分かって居ないので、失礼な事をしてしまうかもしれませんがどうぞ宜しくお願いします。」


「あらあら、良いのよ。ゲイルからも貴女がとても勉強家だと聞いているわ。

さぁ、皆様中に入ってね」


ファミーユ様が侍女に目配せすると、私の前に何人かが来てマリー様はこちらです。とズルズルと連れて行かれた。




訳も分からないうちに服をひん剥かれ、お風呂に入れられ、丹念に磨き上げられてしまった。


初めて沢山の同性に隅々まで見られ、羞恥心で爆発したかった。



そして、化粧を施され髪は綺麗に纏められた。


こちら、奥様からです。と着せられたドレスは瑠璃色をしていた。


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