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すると

ポンポン、とゲイルが私の頭を撫でた



私はびっくりして、俯いてしまっていた顔を上げる


「…すまない、これくらいなら許して貰えるだろうか?


…少し、俺の話しをしても良いか?」



そう言って、ゲイルは少し困ったように微笑む


頭を撫でられた事と、微笑まれた事で思考回路はショート寸前である。


涙は飛んで行きました。

茹でダコになりながら、音がなるくらいに顔を縦に振った。




「…俺は戦争孤児だ。

産みの両親の事は、余り良く覚えていない。

6歳の時に、1人になった。

まだ幼なく何も出来なかったが、何故か食べ物にだけは困らなかった。

後からアレンに聞いたら、精霊達が持って来てくれていたのだろうと言っていた。


王都近くの雨風だけが凌げるような場所で花を売ったりして毎日を過ごしていた。


7歳を過ぎたある日、突然魔力が増大し魔力過多による発作が起きた。」


「え…」


「とても危険な状態だったと思う。

だが、そんなよく分からない子どもを助ける人は居ない。

意識が朦朧として来た時、一匹の狼を見た。


それが、アレンだ。


気が付いた時には綺麗なベッドの上にいた。

そこには、俺の師匠…アンバート前候爵夫人とアレンが居た。

師匠は俺に危険な状態からは脱したが、魔力循環を覚えなければまた繰り返すだろうと俺に分かりやすく説明してくれた。


師匠自身がそれを教えられる、だからこの家、アンバート侯爵家の子どもになれと言った。」


「うん…」


「アンバート家には2人の息子、そして生まれたばかりの娘がいた。

その娘が、先程のカレンだ。

貴族は魔力が高い庶民を自分の血筋に入れる事は珍しく無い。

幸い、息子2人も俺より年上で後継者の諍いも無い。


俺は三男坊として、その家に入る事になった。

師匠に師事して、魔力と魔法を磨き15歳で家を出て国の魔導士団に入った。

アレンは『面白いから』と言って、その間ずっと俺の傍に居てくれたんだ。

それからは知っての通りだ。」


「そうだったんだ…

教えてくれてありがとう、でもどうして…?」


「…何となく、マリーには言わなければならない気がした。

師匠にマリーの事を伝えてあるしな。

それ故に会わせろと煩くて…

マリーが王都に行く際、あちらの家にも寄ろうかと思っているのだが…構わないか?」


「え!それは大丈夫だけど…

ゲイル、王都へ付いてきてくれるの?」


「あぁ、保護した身だからな。保護人として付いて行く必要がある。」


「なるほど。お手数かけます、宜しくお願いします」


「こちらこそ、手間を取らせる」



湖に来られて本当に良かった。


このまま離れていたら、私はゲイルの事を遠くから見守る事さえ出来ず

忘れようと努力していただろう。


推しを眺める事さえ出来ないなんて、なんの拷問?

私は、絵が下手過ぎるので偶像崇拝も出来ない。



拗らせ過ぎたヲタ心だ。


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