8 ※ゲイルside

驚く事ばかりだった。



彼女はアレンが見えてしかも声まで聞こえるらしい。

アレンも彼女を気に入ったのか、名前を教えていた。



彼女は、とてもしっかりしている。


アレンに怖がる様子も無く、異世界からやって来たのに混乱はしているがパニックになる事は無い。

それは、元々の年齢と働いていたという経験が有るからだろう。


そして元の世界に未練は無いらしい。


男の1人や2人居そうなもんだがな、さっぱりした性格の様だ。


途中、そんなに正直に全て話して大丈夫か?と不安になったが

俺の事も"漫画"とやらで多少知っていると言っていたので、信用……してくれているんだろう。


今度どんな感じだったか聞いてみるか…




『ゲイル、マリーが落ち着くまではここで面倒を見てやったらどうだ?』


アレンがニヤニヤしながら聞いてくるが、俺もそう考えていた。

身体は直ぐに治るだろう。

だが、落ち人は国に報告義務が有る為手続きがややこしい。

その間の色々を考えたら、マリーは何だか正直過ぎて危なっかしい様な気がするので

拾った分どうせ心配になるなら近くに置いておいた方が良い。




勿論、他の選択肢も有るので其方も踏まえつつだが…



マリーは慌てていたが俺が説明すると、真剣に聞きながら

信じられない、といった顔をしたので男女間の心配も無い事を伝えた。


彼女はそれを聞き終えると、少しポカンとしてからハラハラと涙を流し出した。




まさか泣かれるとは思わず、酷く焦ってしまった。

頭でも撫でたら良いのか?と思ったが

先程、男女間の心配事は無いと言った手前

触れる事も出来ず、手を上げたり下げたりしている内に悲しくて泣いている訳では無いと分かったので胸を撫で下ろした。




1人、この世界にいきなり連れてこられて

不安が無いなんて有り得ないのに…何処かマリーは大丈夫な気がしていたのだ。


俺自身は優しくした覚えは無かったが優しくされて堪えきれずに泣いた彼女を見て考えを改め、ここにいる間は優しくしてやろう、と思った。




それから何度か話して、消化に良さそうな物を食べさせてゆっくり眠るように伝えた。


『マリーは面白いのぅ』



自分の部屋に戻ると、アレンが身体を落ち着かせながらこちらに話し掛けてきた。


確かにマリーは表情がコロコロ変わり、見ていて飽きない。


「気に入ったのか?」


『あぁ、アレは中々面白そうだ』


ご機嫌にアレンが応える。

アレンのこんな表情は久し振りなので、余程彼女が気に入ったのだろう。



『アレはお主に気があるな』


「………は?出会ったばかりだぞ、失礼だろ」




『ゲイル………鈍いのぅ、先が思いやられるが…まぁゆっくりせい』



「ゆっくりも何も…変な事を言うな」


『お~怖い、怖い。そんなに眉間に皺を寄せているとそんな顔になるぞ』


馬鹿な事を…と溜息を付いた。



知っているくせにーー

小さい頃からの付き合いだ。





愛だの、恋だのは良く分からない。


俺にはアレンと師匠だけだったから。


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