7
朝、とても良い香りで目が覚めた。
私は、こちらに来た時に長袖膝下の白いワンピースを着ていた。
きっと女神様が見繕ってくれたのだろう。
昨日に比べたら痛みも随分引き、起き上がる事が出来た。
ベッドの横に履いていたであろう靴が置いてあったのでそれを履いて、扉を開けて匂いのする階段の下まで降りていく事にした。
手すりを持って慎重にだ。
降りると、ゲイルが腰に巻くタイプのエプロンをしてキッチンに立っていた。
「起きたのか。簡単な物しか無いが食べるか?」
まさか、とは思っていたが昨日のパンがゆもゲイルが作っていたのだろうかーー
テーブルの上に次々とお皿が並べられていく…
その様子を唖然と見ていた。
「どうした?そっちの椅子に座れ、冷めてしまうぞ」
そこには、ガレットのように薄い生地の上にベーコンや卵の乗ったものとその横に添えられた鮮やかな野菜のピクルス。
温かい具沢山のスープが木の器に入れられ並んでいた。
指をさされた椅子にちょこんと座り、ごくりと喉を鳴らした。
「コーヒーと紅茶どちらが良い?」
「あ、ありがとうございます。紅茶をお願いします」
いやいや、簡単な物とは??
完璧な朝ご飯なんですけど?
昨日からびっくりする事ばかりだ。
まさかゲイルが料理上手とは知らなかった…
書かれて無かったんだから当たり前だけど…
入れてくれた紅茶を受け取って
ゲイルも前の席に座った
「ゲイルは……お料理上手なんですね」
「そうか?暇を持て余し過ぎて凝りだしたらキリが無かっただけだ。
マリーは元々28歳だったんだろ?俺は今22歳だが大した身分でも無い、敬語もいらないぞ」
私は、それはもうキラキラした目でその綺麗な食卓を眺めた。
早く食べたくてウズウズしてしまった。
「じゃあ、敬語辞めるね!凄い綺麗!こんな素敵な朝ご飯初めて食べる!いっただきまーす!」
ナイフとフォークでガレットらしき物を一口食べると卵がトロッとしていてベーコンの塩気が丁度良い。
「んーーー美味しい~幸せ♡」
「…それが素か?」
「あ」
すっかり取り繕うのを忘れていた。
美味しい物は罪だ
10歳若返ったからか言動もそれなりになってしまったらしい。
「ふ…そっちの方が良いな」
ほんのり、凄くほんのりだけどゲイルが微笑んだ。
私はボンッと音が鳴ったと錯覚するほど
一瞬にして顔を真っ赤にし、手で顔を覆った
「(尊い!!!尊過ぎる!)」
昨日気持ちを再確認してしまってからのこの笑顔は反則だ。
ご飯3杯は余裕で食べられる。
課金は何処で出来ますか?
銀行に振り込めば良いですか?
「……まだ無理をしない方が良いから、今日は馴染みの商会に家まで来て貰って
マリーの最低限の必需品をそこで買う予定だ。
外に出られるようになればまた買い足せば良い」
「ありがとう、お金……今は何も持って無いけど働ける様になったら絶対返すね」
「必要無いが…マリーがその方が良いならそうしたら良い」
「うん!」
幸い、私はアロマセラピストという手に職が有る。
初期費用はお願いしなければならないが、この世界でも多少重宝するのでは無いかと思っているので直ぐにお返し出来るように頑張ろう。
一刻も早く恩を返してゲイルの事は遠くで見守ろう、そうしよう
目指すは異世界での独り立ち!
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